近年は「省エネ住宅」でマイホームを建てる人が増えています。
国土交通省の調べによると、令和元年(2019年)に着工した戸建住宅のうち、国の定める省エネ基準に適合する住宅の割合は、8割を超えているそうです(※)。
省エネ住宅は、いまや新築住宅のスタンダードといっても過言ではないでしょう。
とはいえ、省エネ住宅には建築費が高くなるというデメリットがあります。
そこで活用したいのが、国や自治体が用意する「補助金制度」です。
ここでは、補助金が得られる省エネ住宅の条件や具体的な補助額などを、まとめて紹介します。
(※)国土交通省 住宅局「第1回 脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001400905.pdf
省エネ住宅とは
省エネ住宅とは、「気密性や断熱性などの家の機能を高めて、家庭で消費するエネルギー量を抑えられる住宅」のことです。
経済産業省・資源エネルギー庁のホームページによると、一般家庭で消費されるエネルギー量の約30%は暖冷房が占めており、このエネルギー消費量を抑えられる省エネ性能に優れた住まいを「省エネ住宅」としています。
そして、省エネ住宅の実現には「断熱」「日射遮蔽」「気密」の3点で対策が必要だと伝えています。
それぞれの具体的な対策は、次の通りです。
【断熱】壁や床、屋根、窓などから逃げる熱の移動を少なくする
【日射遮蔽】日射による室温の上昇を抑える
【気密】住宅の隙間を減らす
たとえば、断熱と気密の性能を高めることで、冬は室内で暖めた熱が逃げにくくなり、暖房のエネルギー消費量を抑えられます。
また、夏は室外の熱が侵入しないよう日射遮蔽に工夫を施すことで、冷房のエネルギー消費量を抑えられます。
このように、熱を「逃がさない」「侵入させない」ように設計を工夫してエネルギー効率を高めることが、省エネ住宅には求められるのです。
参考:資源エネルギー庁「省エネ住宅」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/
省エネ住宅の基準~「外皮基準」と「一次エネルギー消費量基準」
省エネ住宅は、国が定める省エネ基準に適合する必要があります。
この基準には、いくつかの指標がありますが、主に「外皮基準」と「一次エネルギー消費量基準」の2つの基準をクリアすることが求められます。
それぞれの基準について解説しましょう。
外皮基準(UA値・ηAC値)
外皮とは、外気に接する住宅を取り囲む部分のことです。
具体的には、屋根や外壁、床、窓などをまとめて外皮といいます。
外気に接する部分ですから、熱を逃がしたり侵入したりしやすい場所でもあります。
そのため省エネ住宅では、断熱や日射遮蔽の性能を高めることで、熱の出入りを抑える必要があります。
ここで、断熱や日射遮蔽の性能を客観的に表す指標として、「UA値」「ηAC(イータエーシー)値」といわれる数値が使われます。
UA値(外皮平均熱貫流率)は断熱性能の評価に、ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)は日射遮蔽の性能を評価する基準です。
この基準を用いて、省エネ住宅の性能が判断されます。
なお、それぞれの基準は地域によって異なります。
埼玉県を始め、首都圏の大部分の地域では、「UA値が0.87以下」「ηAC値は2.8以下」が省エネ住宅の適合基準です。
一次エネルギー消費量基準(BEI)
一次エネルギー消費量とは、住宅で使われる設備のエネルギーを熱量に換算した値のことです。
冷暖房(エアコン)だけでなく、照明、家電、給湯、換気などのエネルギーも一次エネルギー消費量に含まれます。
省エネ住宅に適合するには、この一次エネルギー消費量が、基準となる消費量を下回る必要があります。
ここで用いられるのが、「一次エネルギー消費量基準(BEI)」というものです。
詳しく述べると長くなるので割愛しますが、「BEIが1.0以下」であれば基準を満たすことを覚えておきましょう。
なお、太陽光発電システムなどの創エネ設備を導入する場合、そこで発電するエネルギー量を一次エネルギー消費量から差し引くことが可能です。
このため、太陽光発電システムを導入する家は、省エネ基準を満たしやすくなります。
省エネ住宅は「住宅性能評価書」でも確認できる
上記の通り、UA値やηAC値などを調べることで、その家が省エネ住宅か否かを確認できます。
ただ、これらを知らなくても住宅の省エネ性能を簡単に調べる方法があります。
それが、「住宅性能評価書」に示されている「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」を確認するという方法です。
住宅性能評価書とは、家が完成した後に第三者評価機関が住宅の性能を評価し、その結果を伝えた書面のことです。
このなかで「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」をチェックすることで、その家の省エネ性能が確認できます。
ちなみに、断熱等性能等級は「等級5」がZEH基準相当、「等級6」が一次エネルギー消費量を約30%削減できる家の基準相当、「等級7」が一次エネルギー消費量を約40%削減できる家の基準相当とされます。
また、一次エネルギー消費量等級は「等級5」が低炭素基準相当、「等級6」がZEH基準相当です。
省エネ住宅に関連する補助金制度
省エネ住宅を建てるにはさまざまな工夫が必要なため、基準を満たさない一般的な住宅と比べて建築コストが高くなる傾向があります。
そこで国や自治体は、省エネ住宅を取得される方を対象に、住宅取得費の一部に使える補助金制度を用意しています。
これを活用することで、省エネ住宅をお得に手に入れることが可能です。
ここで、省エネ住宅を取得する際に受けられる補助金制度について紹介します。
ZEH補助金
ZEH基準を満たす家を取得する人を対象にした、国の補助金制度です。
補助額は、住まいの省エネ性能などに応じて異なり、定額が55~112万円。
これに、蓄電システムや燃料電池などの省エネ設備を導入すると、追加補助も受けられます。
なお、ZEH補助金を受けるには「ZEHビルダー」と呼ばれる施工会社で家を建てることも条件の一つです。
補助金の申請は、ZEHビルダーを通しておこなうことになります。
省エネ住宅に関連する税制の優遇措置
省エネ住宅を取得した人には、補助金だけでなく、税制面で優遇措置が受けられる点も大きな魅力です。
なかでも住宅ローン控除は、省エネ性能の高い家ほど控除額が大きくなりますから、見逃せない制度でしょう。
住宅ローン控除の優遇措置
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して家を取得した人が対象となる減税制度です。
年間の最大控除額は、省エネ性能に応じて異なります。
一例として、長期優良住宅などの認定住宅の場合は最大35万円、ZEHは31.5万円、それ以外の省エネ基準適合住宅は28万円です。
なお、住宅ローン控除は納めた所得税などから控除される制度ですから、納税額以上の還付は受けられません。
とはいえ、住宅ローン控除は家を取得した年から13年間(中古は10年間)も続きますので、省エネ性能の高い家ほど家計に余裕が生まれやすいでしょう。
※2025年末に終了予定
その他の税制の優遇措置
このほかにも、省エネ性能の高い家を取得された方には税制面で優遇措置が受けられます。
たとえば、長期優良住宅や低炭素住宅などの認定住宅を取得された方は、登録免許税の税率が引き下げられます(所有権保存登記は0.4%から0.1%、所有権移転登記は2.0%から0.2%に引き下げ)。
また固定資産税も、新築の場合は取得から3年間は2分の1になる措置がありますが、認定長期優良住宅であれば5年間に延長されます。
まとめ
省エネ住宅は、エネルギー効率を高めることで「環境に優しい家」であるとともに、エアコンなどの使用を抑えられることから光熱費も下げられ、「家計にも優しい家」でもあります。
一般的な住宅と比べて建築コストは高くなりがちですが、国などの補助金や税制面での優遇措置を受けることで、お得に手に入れることも可能でしょう。
なお、ここで紹介した補助金や税制面での優遇措置の内容は、年度によって異なります。
対象条件や補助額なども変わりますので、最新の情報はホームページなどで確認してください。