マイホームの購入資金として、住宅ローンを利用される方はたくさんいらっしゃいます。では、年収600万円の人が住宅ローンを利用する時、いくらまで借り入れできるのでしょうか。
ここでは、年収600万円の借入可能額をシミュレーションするとともに、住宅ローンを利用するときの注意点やポイントもまとめて解説します。
年収600万円の借入可能額はいくら?
一般的に住宅ローンの借入可能額は、年収や返済期間、返済負担率、金利などの要素をもとに、金融機関が算出しています。
では、年収600万の人の借入可能額はいくらになるのでしょうか。
ここでは、「返済期間35年」「返済負担率25%」「金利は全期間固定で1.82%(フラット35の2024年4月現在の金利)」とし、借入可能額をシミュレーションしてみます。
なお、返済方法は元利均等返済とします。
●年収600万円の借入可能額と毎月の返済額
・借入可能額 3,880万円・毎月の返済額 12万4,974円
参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
年収600万円の借入可能額は、3,880万円という結果になりました。
年収600万円の手取り額から借入可能額を算出
上記のシミュレーション結果から、3,880万円を借り入れた人の毎月の返済額は約12万5,000円です。年収600万円の人の中には「意外と高い」と思われた方が、いらっしゃるかもしれません。
年収600万円といっても、税金や保険料、ボーナスを含めている場合、毎月の給与は30~35万円くらいの人が多いでしょう。
その給与の3分の1以上が、住宅ローンの返済に当てられるわけです。
家計の状況は人それぞれですが、住宅ローンの返済が家計を圧迫してしまう方も少なくないでしょう。
返済額が高いと感じた人は、税金や保険料などを除いた「手取り額」を元に、借入可能額を求めた方が、家計の負担を軽減できます。
年収600万円の手取り額は、480万円くらいの人が多いのではないでしょうか。
この手取り額を元に、改めて借入可能額をシミュレーションしてみます。
返済期間や金利などの借入条件は、先ほどと同じです。
●手取り480万円の借入可能額と毎月の返済額
・借入可能額 3,104万円・毎月の返済額 9万9,979円
参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
借入可能額は約800万円も減ってしまいますが、毎月の返済額は10万円以内に抑えられます。
この額なら、返済が始まってからの家計に余裕が生まれるでしょう。
このように、借入可能額を求める際には「毎月の返済額がいくらになるか」という視点を持つことも大切です。
3,500万円を借りる場合の返済額はいくら?
年収600万円の人の中には、「もう少し借入額を増やしたい」と考えている方もいらっしゃるでしょう。今後、年収が増える見込みがある人であれば、借入額を増やしても返済できるかもしれません。
では、年収600万円の人が少し背伸びして「3,500万円」の住宅ローンを借り入れた時、毎月の返済額がいくらになるのかをシミュレーションしてみます。
借入条件は先ほどと同じで、返済期間は35年、返済負担率は25%、金利は全期間固定で1.82%とします。
●3,500万円を借り入れたときの返済額と返済負担率
・毎月の返済額 112,735円・返済負担率 約22.5%(手取り480万円の場合、約28.2%)
参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
毎月の返済額をみると、11万2,735円です。
毎月の給与が30~35万円くらいの人だと、無理なく返済ができるかもしれませんが、返済負担率を見ると手取り額(480万円)の場合は約28.2%です。
一般的に、返済負担率は「25%以内だと無理のない返済プランを立てやすい」といわれます。
28%だと、家計の状況によっては厳しい方がいらっしゃるかもしれません。
毎月の生活費や今後必要な教育費などを試算した上で、検討されることをおすすめします。
4,000万円を借りる場合の返済額はいくら?
さらに借入額を増やして、「4,000万円」の融資を受ける場合の返済額をシミュレーションしてみます。借入条件は先ほどと同じです。
●4,000万円を借り入れたときの返済額と返済負担率
・毎月の返済額 12万8,840円・返済負担率 約25.8%(手取り480万円の場合、約32.2%)
参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
毎月の返済額は、13万円近くになります。
返済負担率を見ると、手取り額(480万円)では約32.2%です。
金融機関の審査には通るかもしれませんが、重い負担に感じる人は多いでしょう。
どうしても4,000万円を借り入れたいという方は、「ボーナス返済」を利用するのも一手です。
仮に、4,000万円のうち500万円を年2回のボーナスで返済する場合、毎月の返済額は11万2,735円、ボーナス返済額は9万6,891円(1回あたり)になります。
これなら、家計の負担が軽くなり滞りなく返済できるかもしれません。
ただし、ボーナスは勤務先の業績に応じて変動するため、減ることも予測されます。
また、完済が定年後になる人だと定年後もボーナス返済が続きます。
ボーナス返済を利用する場合は、報酬が減ったりなくなったりしても滞りなく返済できるよう、貯蓄計画をしっかり立てることが大事です。
限度額まで借り入れるリスクを知っておく
理想のマイホームを手に入れるために、「借入限度額ギリギリまで融資を受けたい」という気持ちはわかります。
ただ、借入額が増えると返済額も増えてしまい、返済が滞るリスクが高まります。
返済が滞ると、遅延損害金が生じたり一括返済を求められたりすることがあります。
それに応じなければ、家が差し押さえられて競売にかけられる可能性もあり、人によっては自己破産するケースもあるのです。
また、住宅ローンの返済期間は30年前後と長期にわたります。
この間に収入が増えだけでなく、減るタイミングもあるでしょう。
たとえば、転職や起業をしたり病気やケガで長期入院をしたりすると、収入が減ることも考えられます。
あるいは、家族が増えて生活費が増えたり子どもの教育費が想定外に高かったりと、支出が増える可能性もあります。
こうした家計の変化があっても、住宅ローンの返済は変わらず続きます。
くわえて、変動金利型の住宅ローンを利用する場合は、金利上昇のリスクにも備えなければなりません。
限度額いっぱいまで借り入れると、こうした変化に対応できず返済が滞るリスクが高まります。
住宅ローンの借入額は、返済が滞らないように余裕をもって決めることが大事です。
頭金はいくらあると良い?
返済が滞るリスクを避けるには、借入額を減らす、つまり「頭金(自己資金)を増やす」ことも検討したいポイントです。
一般的に、マイホームの購入に必要な頭金は「物件価格の1~2割くらいが目安」といわれます。
4,000万円の家を購入する場合だと、頭金は400~800万円くらいです。
頭金を用意するメリットの一つが、「金融機関の審査に通りやすい」ことが挙げられます。
借入額を減らせることに加え、「貯蓄計画が立てられる人」と金融機関からの信頼を得られ、審査に通りやすくなるのです。
また、借入額が多くなると金利がアップする住宅ローンも多いため、「金利負担を減らせる」ことも頭金を用意するメリットです。
たとえばフラット35の場合、融資率(物件価格に対する借入額の割合)が9割を超えると、金利は0.11%アップします(2024年4月現在)。
わずか0.11%でも、トータルの返済額は数十万円から数百万円も増えますから、頭金は最低でも1割、できれば2割用意すると安心です。
貯蓄だけで足りない時は、親に援助してもらえないか相談するのも一手でしょう。
住宅ローンで苦しい生活を避けるためのポイント
頭金を増やすこと以外にも、無理のない返済計画を立てるポイントはいくつかあります。以下の内容を踏まえて、滞りなく返済できる借入額を検討しましょう。
返済負担率は25%以内に設定する
先ほどもお伝えしましたが、返済負担率は25%以内にすると無理のない返済プランを立てやすいといわれます。その際に用いる年収は、税金や保険料などを差し引いた「手取り額」で試算すると、確実性が増します。
ライフイベントごとの支出額をシミュレーションする
ライフイベントが重なるときは支出も増えるため、住宅ローンの返済が滞りやすくなります。たとえば、子どもが進学すれば入学金や授業料などの教育費が増えますし、きょうだいがいる家庭なら進学時期が重なると教育費が一気に増えるかもしれません。
こうしたライフイベントで、「いつ、いくら必要か」をあらかじめ把握した上で、住宅ローンの借入額や貯蓄計画を決めることにより、返済が滞るリスクを抑えられます。
具体的にいくら必要になるのかわからないときは、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談すると良いでしょう。
税金や保険料などのランニングコストも把握しておく
マイホームを購入すると、固定資産税が毎年課せられます。また、火災保険や地震保険といった保険料も必要です。
これらの費用を意外と高く感じる方も多いため、資金計画に含めることもポイントです。
ほかにも、住宅設備の修理代や交換費用、外壁や屋根の塗装費用、大規模なリフォームなどの必要経費を想定して、貯蓄計画を立てるのも大事なポイントです。
まとめ
住宅ローンを利用するときは、「いくら借り入れできるか」よりも「いくらまでなら返せるか」という視点の方が大事といわれます。
同じ年収600万円でも、家族構成が違えば生活費も違いますし、年齢によっても今後必要な額が異なります。
家計の状況は人それぞれですから、将来のライフイベントも考慮した上で、身丈に合った借入額を決めることが、住宅ローンを賢く利用するためのポイントです。