家や建物が建てられる土地には、「建ぺい率」と「容積率」という指標が定められています。
建築にあたっては、それぞれの数値内に収まるように家づくりを進める必要がありますが、この「建ぺい率」「容積率」というのはどのようなものなのかご存知でしょうか?
ここでは、それぞれの基本的な情報をまとめて解説します。
建ぺい率とは
建ぺい率とは、敷地面積に占める建築面積の割合を示した数値のことです。
建物の広さを制限するための指標となっており、その土地に建てられる家の建築面積は、以下の公式で算出できます。
・家の建築面積 = 敷地面積 × 建ぺい率
たとえば、敷地面積が160㎡の土地で建ぺい率が50%の場合、その土地に建てられる家の建築面積は80m2までとなっています。
建ぺい率が定められている理由
建ぺい率が決められている理由には、大きく分けて2つあります。
1つ目は、日照や通風などの環境を保つため。
2つ目が、災害時の防火や避難といった安全性の確保するためです。
建ぺい率の上限を超えてしまうと違反建築物となってしまい、住宅ローンが利用できないなどのペナルティがありますので、必ず守らなければなりません。
容積率とは
容積率は敷地面積に占める延床面積の割合を示した数値です。
建物の広さや高さを制限するための指標となっており、その土地に建てられる家の延床面積は、以下の公式で求めます。
・家の延床面積 = 敷地面積 × 容積率
敷地面積が160m2、容積率が80%の土地には、延床面積は128m2までの家が建てられる計算です。
容積率が定められている理由
容積率は、建物の規模や周辺環境との調和、人口の制限を目的としています。
建ぺい率同様に、容積率も上限を超える建物は違反建築物となります。
建ぺい率と容積率は用途地域ごとに決まっている
建ぺい率と容積率は、自治体の定める都市計画の「用途地域」ごとに数値が定められています。
用途地域とは、その地域に建てられる建物の種類や広さなどを制限する条例の一つです。
一戸建ての並ぶ閑静な住宅街は、「第一種低層住居専用地域」あるいは「第二種低層住居専用地域」という用途地域に分類されることが多いです。
これらの地域では、建ぺい率が「30・40・50・60」のいずれかに、容積率は「50・60・80・100・150・200」のいずれかにするよう決まっています。
また、マンションなどの高い建物が建てられる「第一種中高層住居専用地域」や「第二種中高層住居専用地域」では、建ぺい率が「30・40・50・60」、容積率が「100・150・200・300」のいずれかで設定されます。
用途地域は全部で13種類ありますが、それぞれの用途で建ぺい率と容積率が定められています。検討している地域の用途地域を確認することで、建ぺい率・容積率をある程度、把握できます。
計画している住宅が、第一種低層住居専用地域には建てられないといった、建ぺい率や容積率の制限で困っている方は、用途地域を変えて土地を探してみるという手もあります。
建ぺい率の緩和措置
広々とした住空間を実現するには、建ぺい率が少しでも高い土地に家を建てることがポイントとなっています。
建ぺい率には緩和措置があります。
条件によっては周辺の土地よりも建ぺい率を10%ほど高く設定できる場合もありますので、建築面積の大きい家を検討されている方は、次のような地域が狙い目です。
防火地域・準防火地域
都市計画で「防火地域」または「準防火地域」に指定された地域において、「耐火建築物」の住宅を建てる場合は、建ぺい率を10%緩和するという措置があります。
防火地域は主に駅周辺の商業地で指定されています。
そのため、戸建住宅を建てるにはハードルが高いですが、準防火地域であれば住宅地のエリアもあるため、緩和措置が受けられる土地も見つけやすくなります。
角地
自治体によっては一定の条件を満たす角地でも建ぺい率を10%緩和できる場合があります。
また、「街区の角にある土地」「道路に挟まれた土地」「公園、河川などに隣接する土地」の場合も角地緩和にあてはまります。
容積率の緩和措置
容積率にも緩和措置があり、一定の条件を満たす空間は延床面積に含めないことが可能です。この措置を活用することで、容積率を抑えつつ広々とした住宅を作ることも可能です。
容積率の緩和措置は建ぺい率と異なり、用途地域とは関係がありません。
以下の条件に当てはまる場合、どの用途地域でも適応されます。
ベランダ・バルコニー
以下の条件を満たすベランダやバルコニーは、延床面積に含まれません。
・壁や柱で囲まれていないこと
・外壁から2m以内(奥行きが2mまでのベランダ・バルコニー)
ロフト
ロフトも、以下の条件を満たせば延床面積に含まれません。
・高さ1.4m以下
・フロアの床面積の2分の1までの広さ
・常設はしご・階段が設置されていない
地下室
地下室も容積率の緩和措置を受けられる空間の一つです。
以下の条件を満たすことで延べ床面積に含まずに地下室を作ることができます。
・延床面積の3分の1以下までの広さ
・天井が地面から1m以内
延床面積が150m2の家なら、50m2までの地下室がつくれます。
ビルトインガレージ
ビルトインガレージも、床面積が延床面積の5分の1以下の場合に容積率の緩和措置を受けられます。
・延床面積の5分の1以下の広さ
車やバイク好きの方はもちろんですが、趣味の空間としてビルトインガレージを設けるといった使い方も可能です。
建ぺい率と容積率以外で気をつけておきたい建築制限
家づくりにおける建築制限は、建ぺい率と容積率以外にも存在します。
建ぺい率や容積率よりも優先度が高い制限もあるため、検討している土地の制限は必ず確認しましょう。
絶対高さ制限
隣地の日当たりや風通しの確保、街並みの維持などを目的として、建物の高さを規制するための制限です。
「第一種低層住居専用地域」には、建物の高さを10mまたは12mまでに制限している土地もあります。10mと12mのうち、どちらを建物の高さの限度にするかは、地域の都市計画で定められています。
また、一部の都市には「高度地区」という地域も存在し、高さに関する細かな規定が設けられています。
こうした制限のある土地で家を建てるとき、容積率に収まっている建物でも高さがオーバーすれば違反建築物になりますから、注意が必要です。
斜線制限
斜線制限も高さ制限の一種です。
隣の敷地に建つ建物の日当たりや風通しの環境を確保することを目的としています。
斜線制限には「北側斜線制限」「道路斜線制限」といったようにいくつかの種類があります。
代表的なものとして「北側斜線制限」があげられますが、これは北側に位置する隣地の日当たりを確保するために、建物の高さを制限する規制です。
この制限に対しては、隣の敷地との境界線上から一定の勾配を付けて、オーバーした部分には斜めの欠けをつくるといった設計の工夫で対処が可能な場合もあります。
「道路斜線制限」も北側斜線制限と同じ理屈で、道路の環境を維持するために高さの制限を定めています。
日影規制
日影規制も高さ制限の一種です。
建物からできる影が、周辺の土地に一定時間以上かからないようにするために建物の高さを制限するものです。
対象となる建築物は用途地域によって異なっており、第一種・第二種低層住居専用地域では、高さが7mを超えるか地上3階建て以上の建物というように定められています。
建ぺい率・容積率の上限ギリギリだと増改築に影響が出ることも
建ぺい率と容積率が関係するのは新築の家だけではありません。
将来、増改築をする際にも建ぺい率・容積率を守る必要があります。
そのため、建ぺい率・容積率の上限ギリギリで住宅を建てた場合、将来増改築ができなくなる可能性が出てきます。
増改築で起こりがちなのは、カーポートを新設した際に建ぺい率がオーバーするというケースです。
柱と屋根がある建築物は建築面積に含まれてしまいます。
カーポートも建築面積に含まれるため、建ぺい率の上限ギリギリで建てた家で設置すると違反建築物になってしまいます。
このほかに、増改築の際にベランダやバルコニーを広げたら容積率がオーバーするケースもあり、場合によっては減築が必要となることもあります。
将来、リフォームを計画されている方はもちろん、それ以外の方も建ぺい率や容積率にゆとりを持たせた建築計画を行いましょう。
まとめ
建ぺい率や容積率は住宅を建てるにあたって重要なポイントです。
こうした建築制限があることで、だれもが快適に暮らせる街になっています。
それぞれの数値がオーバーしないよう設計を工夫しながら、理想のマイホームをめざしましょう。