「いまの年収で住宅ローンを利用できるのか?」「いくら借りられるのか?」と、不安に思っている方は少なくないでしょう。
金融機関のなかには年収に下限を設けているところもあり、年収が少なすぎると審査に通らない可能性があります。
仮に審査に通っても、融資額は年収に応じて決まるため、物件の選択肢が狭まる可能性もあるでしょう。
ここでは、年収400万円の人が住宅ローンを利用できるかを検証するとともに、仮に利用できる場合、無理のない返済額がいくらになるのかをシミュレーションしてみます。
年収400万円で住宅ローンは利用できるのか
結論からいうと、年収400万円の人は住宅ローンを利用できます。
実際に、年収400万円前後の方で住宅ローンを使って理想のマイホームを購入された方は、たくさんいらっしゃいます。
年収に関する住宅ローンの審査基準について、国土交通省が全国の金融機関にアンケート調査を実施しています。
それによると、年収の下限が「100万円以上」と答えた金融機関は258行、「150万円以上」と答えた金融機関は405行もあったそうです。
年収400万円の方であれば、多くの金融機関で住宅ローンを利用できると考えられるでしょう。
ただし、住宅ローンの審査項目は年収だけではありません。
あくまでも「年収の基準は満たしている」という意味であることを、認識いただければと思います。
※参考:国土交通省「令和4年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001597868.pdf
年収400万円で借入可能な金額の目安
では、年収400万円で借り入れできる融資は、いくらが目安なのでしょうか。
住宅ローンの借入可能額を決める要素には、年収のほか金利、返済期間、返済負担率などがあります。
ここでは、以下の条件で年収400万円の借入可能額を試算してみましょう。
●前提条件
・年収:400万円
・金利:1.76%(全期間固定)
・返済期間:35年
・返済負担率:25%
・返済方法:元利均等
金利は、全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」の2023年4月現在の金利を採用。また、返済負担率は無理のない返済プランが立てやすいとされる「25%」で設定します。
この条件で、年収400万円の借入可能額および毎月の返済額は、以下の通りです。
・借入可能額:2,611万円
・毎月の返済額:8万3,311円
参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
https://loan.mamoris.jp/
年収400万円の方が無理なく返済できる借入可能額は、約2,600万円というシミュレーション結果になりました。
返済負担率は35%まで設定できる
「2,600万円だと、希望する物件が手に入らない…」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
ただ、これはあくまでも「無理のない返済額のシミュレーション」であり、人によっては借入額を増やすことも可能です。
そのポイントとなるのが「返済負担率のアップ」です。
ここで改めて、返済負担率について解説しておきましょう。
返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を示すものです。年収400万円の方が年間100万円のローンを返済する場合、「100万円÷400万円=25%」が返済負担率になります。
一般的に、無理のない返済プランを立てるには「25%以内が良い」といわれます。
ただ、この返済負担率をアップすることで借入可能額を増やせます。
実際、市中の金融機関では返済負担率を30~35%に設定しているところが多いとされ、条件によっては借入可能額を増やせるでしょう。
ちなみにフラット35の場合、年収400万円以上は35%、年収400万円未満の方は30%が上限です。
では、返済負担率を35%に設定した場合、借入可能額および毎月の返済額はいくらになるのでしょうか。
再びシミュレーションしてみます(前提条件は、返済負担率以外は同じで、全期間固定金利1.76%、返済期間35年、元利均等返済とします)。
・借入可能額:3,656万円
・毎月の返済額:11万6,655円
参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
https://loan.mamoris.jp/
返済負担率を35%にアップできれば、借入可能額は約3,600万円と、25%のときより1,000万円以上も増やせることがわかります。
限度額まで借り入れるリスク
年収400万円の人に対する住宅ローンの融資額は、約3,600万円が限度額といえそうです。
これだけの融資が受けられたら、物件の選択肢が広がりますし、実現できるこだわりも増えるでしょう。
ただし、住宅ローンは返済しなければなりません。
ここで改めて、毎月の返済額に注目してみます。
借入額が約2,600万円の場合、毎月の返済額は8万3,311円です。
一方、約3,600万円だと毎月の返済額は11万6,655円になります。
どちらの返済額が、現実的でしょうか。
年収400万円がボーナス込みの場合、毎月の給与は25万円弱くらいの方が多いでしょう。
借入額が約2,600万円であれば、給与の3分の1を住宅ローンの返済に当て、残り3分の2を生活資金や貯蓄などに当てられます。
しかし、借入額が約3,600万円だと給与のほぼ半分を住宅ローンの返済に当てることになります。
将来的に年収が大幅に増える見込みがあれば、しばらく我慢することでしのげるかもしれません。
しかし、予想に反して年収が増えないと、給与の半分が住宅ローンの返済に消える生活が35年も続くことになるのです。
長い人生を考えると、返済期間中に何が起きるかわかりません。
病気やケガで収入が減ったり支出が増えたりすることもあるでしょうし、子どもの進学や冠婚葬祭など多額の資金が必要になることもあるでしょう。
変動金利型の住宅ローンを利用している方であれば、金利の上昇で返済額がアップすることも考えられます。
限度額ギリギリまで借り入れると、こうしたさまざまなリスクに柔軟な対応ができず、返済が滞る可能性が高まります。
無理のない返済プランを立てるには、返済負担率を25%以内に設定すること。
年収400万円の方なら、約2,600万円の方が安心です(全期間固定金利1.76%、返済期間35年の場合)。
なお、物件価格と比べて足りないようであれば、頭金を増やすことも検討しましょう。
無理のない住宅ローン返済プランを立てるポイント
返済負担率のほかにも、無理のない住宅ローンの返済プランを立てるには、いくつかのポイントがあります。
以下の点も、借入可能額を左右する項目ですから、しっかり確認した上で適正な借入額を決めましょう。
頭金を用意する
最近は、頭金なしでも住宅ローンを利用できる「フルローン」という商品が増えています。
ただ、金利が高いため、結果的に借入可能額が減ってしまう場合がありますし、借入額が増えれば返済額も増えるため、返済が始まってから家計を圧迫するリスクも想定されます。
頭金(自己資金)を多めに用意すれば、住宅ローンの借入額を減らせますし、金利負担も抑えられます。
毎月の返済額も安くなり、家計に余裕が生まれることも頭金を用意するメリットの一つです。
なお、頭金の額は物件価格の2割くらい用意できれば良いといわれます。
3,000万円の家を購入される方なら、600万円の準備ができると理想的です。
定年前に完済するよう返済期間を設定する
定年前に完済できるよう、住宅ローンの返済期間を設定することも大切なポイントです。
定年後だと、年金以外に安定した収入がなければ、貯蓄を切り崩して返済に当てることも考えられます。
高齢になると、医療費や介護費など何かとお金がかかります。
そうした将来必要な資金をできる限り蓄えるためにも、住宅ローンは定年前に完済させましょう。
完済がどうしても定年後になる見込みの方は、繰り上げ返済を上手に利用して完済時期を早めるよう努めることも大事です。
ライフプランに合った資金計画を立てる
住宅ローンの返済は長期にわたりますから、ライフプランに合わせて資金計画を立てることも重要です。
たとえば、「子どもは何人欲しいか」「産休や育休で収入が減る期間はどれくらいか」「マイカーをいつ買い替えるか」「子どもの進学先は公立か私立か」など、いつ、どれくらいの資金が必要になるかを具体的にシミュレーションし、住宅ローン返済が滞らないよう計画しましょう。
家の維持費も考慮する
マイホームを購入すると、住宅ローンの返済以外にもさまざまなコストがかかります。
意外と見落としがちなのが、固定資産税や火災保険・地震保険などの保険料。
地域や建物の構造などにもよりますが、一般的に価格の高い家ほど税額や保険料も高くなります。
借入額を増やして価格の高い家を購入すると、住み始めてから納める税金や保険料も高くなる点は抑えておきたいポイントです。
このほか、故障した設備の買い替えや外壁・屋根の塗装、リフォーム代なども、自分で支払わなければなりません。
計画的に貯蓄することも大切です。
住宅ローン控除も上手に活用しよう
住宅ローンを利用して家を購入された方は、「住宅ローン控除」という減税制度が利用できます。
この制度は、年末時点のローン残高の0.7%分が所得税などから還付されますから、家計を助ける強い味方になるでしょう。
ただし、控除額は納めた税額以上に戻ることはありません。
年収400万円の方の場合、大きな節税効果は期待できませんので、「住宅ローン控除でローン返済に当てる」といった計画はしないことをおすすめします。
まとめ
年収400万円の人なら、約2,600万円の住宅ローンを借り入れることが可能です。
ただし、家計の状況は人それぞれ異なりますから、「毎月これくらいの額なら返済できる」という視点から、借入額を決めることも大事です。
よくいわれることですが、「借りられる額」と「返せる額」は違います。
将来のライフプランを見据えた上で、余裕をもった返済計画を立てられる借入額を検討しましょう。