築30年を超える家に住んでいる方のなかには、建て替えを検討されている人も多いのではないでしょうか。
ただ、「トータル費用はいくらになるのか」「そもそも建て替えができるのか」など気になって、家の建て替えに躊躇されている方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、戸建住宅の建て替えにかかるコストの詳細や安く抑えるためのポイント、注意点などをまとめて解説します。
建て替えの流れ
まずは、家の建て替えの流れについて確認しておきます。
基本的には、新築の家を建てるケースと同じ手順で進みます。
ただし、新しい家を建てる前に、いま住んでいる家の解体作業が必要ですし、事前に確認しなければならないポイントもありますので、流れを把握した上で建て替えを検討することが大切です。
【STEP1】再建築できるかを確認
建て替えを検討する前に、「今の家が再建築不可物件ではないか」を確認します。
再建築不可物件とは、「建て替えができない家」のことです。
古い建物の中には、建築基準法の改正などによって、その土地に新しい家が建てられないことがあります。
一例として、「幅4m以上の道路に2m以上接していない土地」には、新しい家を建築できません。
不安な方は、施工会社に測量などの敷地調査を依頼しましょう。
なお、住宅ローンを利用されている方は、解体する家のローンを完済しておくことも前提条件になります。
【STEP2】施工会社を探す
法的に問題がなければ、新しい家を建築する施工会社を探します。
複数の会社にプランや資金計画などを相談し、自分たちの要望をかなえてくれそうな施工会社を見つけましょう。
【STEP3】見積もり依頼
施工会社を2~3社に絞り込み、工事費の見積もりを依頼します。
単に安いところを選ぶのではなく、引渡し後のメンテナンスや保証体制、担当者との相性なども、比較するポイントです。
住宅ローンの利用を検討している方は、金融機関に仮審査の申し込みをします。
【STEP4】工事請負契約を結ぶ
施工会社を1社に決めて、工事請負契約を結びます。
契約後、新しい家の間取りや仕様などの詳細プランを固めていきましょう。
【STEP5】建築確認申請書を提出
建築プランが固まったら、役所に建築確認申請書を提出します。
住宅ローンを利用される方は、本審査に申し込みます。
【STEP6】仮住まいに引越し
解体工事が始まる前に、仮住まいを探して引っ越します。
【STEP7】解体工事・新築工事
引っ越しが完了したら、解体工事の着工です。解体が完了したら、法務局に「建物滅失登記」を申請します。
その後、新しい家の工事に着工します。地鎮祭や上棟式を予定されている方は、あらかじめ手配しておきましょう。
【STEP8】引き渡し
新しい家が完成したら、施工会社と一緒に竣工検査を行います。
必要な修繕が完了すれば、引き渡しです。
引渡し後、法務局に「建物表題登記」を申請します。
また、住宅ローンを利用される方は「抵当権設定登記」も行い、その後、金融機関でローンを実行してもらいます。
建て替えにかかる費用一覧
国土交通省がまとめた「令和3年度住宅市場動向調査」によると、家の建て替えにかかった費用の平均額は、3,299万円だったそうです(※)。
仮に、家の広さ(延床面積)が30坪とした場合、坪単価で100万円以上の費用になります。
(※)出典:国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001477550.pdf
ただ、建て替えの場合は新しい家の建築費だけでなく、既存住宅の解体工事費や諸費用も換算する必要があります。
ここで、建て替えにかかる費用について一覧でまとめました。
・解体工事費
・仮住まい・引っ越し費用
・測量費・地盤調査費
・新築工事費
・税金(印紙税・不動産取得税・登録免許税)
・火災保険料・地震保険料
・住宅ローンの事務手数料・保証料など
それぞれの費用について、詳しく見ていきます。
解体工事費
既存住宅を解体するのに必要な費用です。
相場は木造なら約5万円/坪、鉄骨造なら約7万円/坪。仮に、30坪の木造住宅を解体する場合、工事費は約150万円になります。
なお、建物の構造や立地条件などによっても金額は異なります。解体業者に見積もりを依頼したうえで、確認しましょう。
仮住まい・引っ越し代
一般的に建て替えにかかる期間は、解体工事で約1~1.5ヵ月、その後の新築工事に3~4ヵ月くらいかかり、おおよそ6ヵ月です。この間は、仮住まいで暮らすことになります。
仮に、家賃10万円の賃貸物件を仮住まいとする場合、家賃のほかにも敷金・礼金・仲介手数料で3ヵ月分の家賃が必要ですし、引っ越し代を含めると100万円以上になります。
測量費・地盤調査費
現況測量図が残っていない土地の場合、方角や敷地内の高低差などの測量を実施します。
とりわけ、古くから伝わる土地は隣地との境界があいまいになっている可能性がありますので、測量が必要です。
測量費は20~40万円が相場です。
併せて、地盤調査も必要に応じて実施します。
この調査費用は、5~10万円が相場です。
地盤調査の結果、改良が必要な場合は、さらに数十万円から数百万円の費用がかかることもあります。
新築工事費
新築の工事費は、建物の広さや仕様などの諸条件によって異なります。
仮に、坪単価100万円とした場合、30坪の家を建てるのに必要な工事費は3,000万円です。
ただ、近年は建材費や人件費の高騰を受け、新築工事費が高くなる傾向があります。
税金(印紙税・不動産取得税・登録免許税)
印紙税は、工事請負契約書に貼付して納めます。
納税額は工事費によって異なり、1,000万円を超え5,000万円以下の場合は2万円です。
また、建て替えた際にも不動産取得税がかかります。
納税額は、建物の固定資産税評価額の原則4%(2024年3月31日までは3%)です。
ただ、不動産取得税には軽減措置があり、評価額が1,200万円以下の場合は0円になります(軽減措置は2024年3月31日まで)。
このほか、法務局に登記をする際には登録免許税も求められます。
火災保険料・地震保険料
新築した建物の火災保険や地震保険の保険料も、あらかじめ用意しておく必要があります。
保険料は、建物の構造や契約プラン、物件のある地域などによって異なります。
仮に、埼玉県で新築木造住宅を建てたときの火災・地震保険料の目安は、5年契約で20~30万円くらいです。
住宅ローンの事務手数料・保証料など
住宅ローンを利用される方は、金融機関に事務手数料を支払うほか、ローン保証会社には保証料が必要です。
費用は金融機関や保証会社によって異なりますし、借入額によっても異なります。
仮に2,000万円を借り入れた場合、事務手数料と保証料の目安は40~80万円くらいです。
建て替え費用を抑えるポイント
ここまで紹介した建て替え費用は、あくまでも目安の額であり、工夫次第では費用を抑えることも可能です。
少しでも安く抑えたい方は、以下のポイントをおさえておきましょう。
見積もりは複数の会社に依頼する
解体工事や新築工事にかかる費用は、施工会社によっても異なります。
このため、複数の会社に見積もりを依頼して比較検討することで、工事費用を抑えることも可能です。
単に価格の安いところを選ぶのではなく、適正価格の会社に依頼することで、安心感も得られます。
間取りや形状をシンプルにする
複雑な形状のデザインや居室数の多い家は、必要な材料費が増えるためコストが高くなる傾向があります。
部屋数を少なくし、シンプルな形状の家にすることも、建築費を抑えるポイントです。
木造在来工法や軽量鉄骨プレハブ工法など、比較的に安く抑えられる工法を選ぶのもコスト削減につながります。
意外と高くなりやすいのが、外構やエクステリアの工事費。
ガーデニング用の庭やウッドデッキなどを設けたい方は、家が完成した後に自分で対応できないか検討しましょう。
閑散期に引越しする
建て替えの時期によっても、費用が変わることがあります。
たとえば、引っ越しの時期。
例年、3~4月が繁忙期ですから、この時期に引っ越すと高くなります。
閑散期の11~2月だと安く抑えられることもあるので、スケジュールを調整しましょう。
また、新しい家に住み始めてから納める固定資産税も、スケジュールに注意が必要です。
固定資産税は、毎年1月1日時点に所有する不動産に対して課せられますが、この日に建て替え工事をしていると土地の軽減措置が受けられず、納税額が高くなる場合があります。
工事費用だけでなく、住み始めてからのコストも含めて検討することも大切です。
建て替えかリフォームか迷ったときはどう決める?
家の建て替えは、土地の購入費は不要ですが、意外と高くなりがちです。
予算的に難しいのであれば、リフォームを選択するのも一手でしょう。
リフォームであれば、修繕したい箇所のみを工事するため費用を抑えられますし、工期も短く、内容によっては住み続けることも可能です。
ただし、家の構造などによっては希望の間取りや仕様が実現できない場合があります。
また、1981年以前の新耐震基準が適用されていない家の場合、基礎や構造部分の耐震工事が必要なケースもあり、内容によっては数千万円の費用になることも考えられます。
いずれにしても、施工会社に両方の見積もりを依頼し、総合的に判断するようにしましょう。
まとめ
一般的に、家の建て替えを検討するところから引渡しまでに要する期間は、1年前後といわれます。
もちろん、人によっても異なりますし、こだわりが多い方だと2年近くかかることもあります。
時間や予算に余裕がある方は、じっくり検討して理想の住まいを手に入れましょう。
時間が限られている方や、予算的に難しい方はリフォームという選択肢もあります。
どちらにしても、現在の家族構成やライフスタイルに適した住まいになるよう検討し、ゆとりある暮らしを実現することが大切です。