勤務先に財形貯蓄制度がある方であれば、「財形住宅融資」という住宅ローンを使うことが可能です。
財形住宅融資は、他の住宅ローンと比べて金利が低く、保証料もかからないといったメリットも多いため、マイホームをお得に購入できる可能性があります。
ただ、利用する際には注意点もありますから、メリット・デメリットを把握した上で選ぶことも大切です。
ここでは、財形住宅融資の特徴や利用条件、申込方法などを中心に解説します。
財形住宅融資とは?
財形住宅融資とは、財形貯蓄制度を導入している企業などに勤めている方が利用できる住宅ローンです。
勤務先の福利厚生などに財形貯蓄制度がある方なら、制度を利用することで融資を受けられます。
ここで、財形貯蓄制度について簡単に説明しておきましょう。
財形貯蓄制度とは、給与やボーナスから一定額を天引きして、利用者に代わって勤務先が貯蓄を行う制度のことです。
毎月1,000円程度でも始められますから、貯蓄が苦手な方でも使いやすい制度でしょう。
財形貯蓄には、「一般財形貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」という3つの種類があり、目的に合わせて利用者が選べる点も特徴の一つです。
積み立てたお金には、銀行の預貯金と同様に利子がつきますが、一定額までは課税されないなど税制上の優遇措置がある点も、財形貯蓄制度を利用するメリットといえます。
財形住宅融資の利用条件
財形住宅融資を利用するには、以下の条件を満たすことが前提になります。
勤務先に財形貯蓄制度があること
財形住宅融資は、利用者に代わって勤務先が貯蓄を行う制度です。
このため、財形貯蓄制度がない企業などに勤めている方や、自営業者は利用できません。
また、会社役員も対象外です。
なお、企業によっては社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトスタッフでも利用できるところもあります。
利用期間が1年以上で貯蓄残高が50万円以上あること
財形貯蓄制度のいずれかの貯蓄を1年以上続けていることも、利用条件の一つです。
途中で中断した方でも、借入申込日前から2年以内に利用していれば融資を受けられます。
また、貯蓄残高の合計額が50万円以上あることも利用条件です。
財形住宅貯蓄の残高が50万円以下でも、一般財形貯蓄と財形年金貯蓄を合わせて50万円以上であれば、申し込めます。
年齢制限
住宅取得が目的の場合は、借入申込日時点で70歳未満であることも条件です。
なお、リフォームが目的であれば79歳未満になります。定年後、再雇用で勤めている方でも、要件を満たせば申し込めます。
建物に関する条件
財形住宅融資を利用するには、住まいに関する条件も満たす必要があります。
「自分が居住するための住宅」「抵当権を設定できる」「火災保険に加入する」など、ほかの住宅ローンでも必須の条件もありますが、それ以外にも財形住宅融資ならではの利用条件について解説します。
なお、利用条件は新築と中古で若干異なりますから、それぞれ説明しましょう。
新築の条件
新築の条件は、次の通りです。
・住宅部分の床面積が70m2以上280m2以下であること
・住宅金融支援機構が定める技術基準に適合すること
建売分譲の家を購入される方は、上記に加え、以下の条件も満たす必要があります。
・借入申込日前の2年以内に完成していること(工事中・未着工でも可)
・まだ人が住んだことのない住宅であること
・借入申込日前に売主以外の登記がなされていない住宅で、申込後、居住者の所有になるもの
・敷地の権利が所有権または借地権(地上権で登記されているものまたは賃借権)である住宅
中古の条件
新築と重なる条件もありますが、中古の条件は次の通りです。
・建築後2年を超えた住宅であること(人が住んでいなかった家も可)
・住宅部分の床面積が40m2以上280m2以下であること
・適合証明書で、財形住宅の中古住宅タイプに適合すると証明されている住宅
・居室が二つ以上あり、店舗併用住宅ではないもの
・借入申込日前に売主以外の登記がなされていない住宅で、申込後、居住者の所有になるもの
・敷地の権利が所有権または借地権(地上権で登記されているものまたは賃借権)である住宅
土地の条件
注文住宅などで家を建てる土地を購入するときにも、財形住宅融資は受けられます。
その場合、申込年度の2年前の年の4月1日以降に取得した土地であることが条件です(取得予定の土地も含む)。
ただし、その土地に家を建てることが大前提ですから、土地のみの取得には利用はできません。
財形住宅融資の申し込み方法
一般的な住宅ローンであれば、銀行などの民間金融機関で申し込みますが、財形住宅融資の場合は企業や団体など組織によって申込先が異なります。
公務員であれば、勤務先の共済組合に申し込むのが通例です。
企業でも、共済組合に申し込むところもあれば、住宅金融支援機構や金融機関へ申し込むようにしている会社もあるようです。
いずれにせよ、勤務先の財形貯蓄を扱う部署などに確認してから申し込みましょう。
なお、実際の手続きは財形住宅融資を扱っている金融機関で行います。
申込時には所定の申込書のほか、財形貯蓄残高計算依頼書、課税証明書、売買契約書または工事請負契約書などの必要書類を準備しなければなりません。
購入する家が新築か中古か、またはリフォームかなど、物件によっても異なりますから、必要書類も勤務先に確認しましょう。
銀行の住宅ローンとの違いは?財形住宅融資のメリット・デメリット
財形住宅融資は、独立行政法人の住宅金融支援機構などの公的機関が提供する住宅ローンです。
銀行などの民間金融機関が提供する住宅ローンとは、何が違うのでしょうか。
財形住宅融資を利用するメリットとデメリットと併せて、お伝えしましょう。
【メリット】金利が低い
財形住宅融資は、5年ごとに金利を見直す固定金利タイプの住宅ローンです。
2023年2月現在の金利は0.87%で、銀行の固定金利タイプと比べて同等または低い傾向があります。
なお、変動金利タイプの住宅ローンと比べると、財形住宅融資の方が高くなります。
また、金利の見直しがあるため、金利上昇リスクがある点も注意が必要です。
【メリット】事務手数料や保証料が不要
通常、銀行の住宅ローンを利用する場合は、金融機関への事務手数料やローン保証会社への保証料が必要です。
その費用は金融機関によって異なりますが、合わせて数十万円になるところが多く、これは自己資金で用意しなければなりません。
財形住宅融資であれば、事務手数料や保証料は不要ですから、ローン契約時の諸費用を抑えられます。
ただし、財形住宅金融株式会社に申し込む場合は、借入額に応じた融資手数料や保証料がかかります。
【デメリット】借入限度額が少ない
財形住宅融資の借入額は、最高4,000万円です。
フラット35であれば最高8,000万円、民間金融機関であれば1億円の融資が受けられるところもありますので、借入額が少ないといえるでしょう。
しかも、財形住宅融資には「貯蓄残高合計額の10倍まで」「物件価格の90%まで」というルールもあります。
仮に、貯蓄残高の合計額が300万円の場合、その10倍の3,000万円までしか借り入れができませんし、物件価格3,000万円の家を購入するときは、その9割にあたる2,700万円が融資限度額になります。
ただし、財形住宅融資はフラット35などの他の住宅ローンと併用することも可能です。
民間金融機関からの借入額では足りないときに、財形住宅融資で補うといった利用法もできます。
【デメリット】団体信用生命保険の保険料は別途必要
民間金融機関の住宅ローンを利用する際、団体信用生命保険への加入が必須条件になります。
その保険料は、金利に含まれますから別途支払う必要はありません。
財形住宅融資でも団体信用生命保険を用意しており、保険への加入が任意である点はメリットかもしれませんが、一部商品では保険料を別途支払う必要があります(住宅金融支援機構の「新機構団信」であれば、金利に含まれるため別途支払う必要はありません)。
財形持家転貸融資の利用も選択肢に
財形貯蓄をしている方であれば、「財形持家転貸融資」という住宅ローンを選ぶことも可能です。
この融資が使えるのは、勤務先に財形持家転貸融資制度のある場合に限られますが、制度があり財形貯蓄をしていれば選択肢の一つになります。
利用条件は、財形住宅融資とほぼ同じで、財形貯蓄を1年以上行い貯蓄残高が50万円以上ある方が対象。
融資額も、貯蓄残高の10倍までで最高4,000万円です。
建物の条件も財形住宅融資と重なります。
財形持家転貸融資を利用するメリットは、「金利が優遇される可能性がある」こと。
たとえば、従業員数が300人以下の中小企業に勤めている方や、18歳以下の子どもがいる方には、借り入れから5年間の金利を0.2%引き下げて利用できます。
通常の金利は財形住宅融資と同じく、2023年2月現在は0.87%ですから、これが0.67%になるためトータルの返済額を抑えられるでしょう。
詳しい条件は、独立行政法人勤労者退職金共済機構のホームページで確認できますから、気になる方はチェックしてはいかがでしょうか。
まとめ
住宅ローンには、民間金融機関が提供するものもあれば、公的機関が提供する商品もあります。
財形住宅融資は、公的機関が提供する住宅ローンの代表例です。
金利も低く諸費用も抑えられますから、利用できる方は選択肢の一つにする価値はあるでしょう。
借入額は銀行などの住宅ローンと比べて少ないものの、ほかの商品と併用できますから、借入額を増やすための手段としての活用できます。
使い方が人それぞれ異なる点も、財形住宅融資の魅力でしょう。