マイホームを検討している人の中には、「ZEH」を選択肢の一つにされている方も多いでしょう。快適な住空間をつくりやすく、家計にも環境にもやさしいといわれるZEHの家には、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、ZEHの基本的な情報やZEHの家を建てるメリットとデメリット、建築費の一部を支援してくれる補助金制度の内容などについて解説します。
ZEHとは?
ZEHとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)」の略で、家庭のエネルギー消費量を「正味(ネット)ゼロ」にできる家のことです。
優れた機能の省エネ設備や高断熱の建材・方法を採用して、エネルギー消費量を抑える一方で、太陽光発電システムなどを導入してエネルギーを創ることにより、エネルギー消費量が事実上ゼロになる家を目指します。
高機能な省エネ設備を導入すれば、住み始めてからの光熱費が安くなります。
また、高断熱の家にすることで、快適な住空間を実現しやすくなるでしょう。
さらに、太陽光発電システムで発電した電気を売れば収入も得られます。
このようにZEHには、さまざまな魅力があるのです。
政府は、2030年度以降に新築される住宅には「ZEH基準を満たす省エネ性能の確保を目指す」という目標を掲げており、今後はZEHの家がますます増えていくことが予測されます。
ZEHの種類
ひとくちにZEHといっても、省エネ性能などにより、いくつかの種類に分けられます。ここでは、一般的な「ZEH」と「ZEH+」、「ZEH Oriented」について、それぞれの特徴をまとめてご紹介します。
ZEH
一般的なZEHとは、以下の条件を満たす家のことです。・空調設備や照明設備など、一次エネルギー消費量の削減効果が20%以上あること
・太陽光発電システムが創るエネルギー量が、一次エネルギー消費量を上回ること
なお、寒冷地や雪の多い地域などで十分な創エネを実現できないところでは、一次エネルギー消費量の75%以上の創出を求める「Nearly ZEH」という種類もあります。
ZEH+
ZEH+とは、ZEHよりも高性能な家のことです。
具体的には、以下の条件を満たす必要があります。
・一次エネルギー消費量の削減効果が25%以上あること
・太陽光発電システムが創るエネルギー量が、一次エネルギー消費量を上回ること
・外皮性能を高めたりHEMS(高度エネルギーマネジメントシステム)を導入したりすることで、エネルギー効率をさらに高めること
なお、ZEH+にも十分な創エネを実現できない地域では、一次エネルギー消費量の75%以上の創出を求める「Nearly ZEH+」という種類もあります。
ZEH Oriented
ZEH Orientedとは、一般的なZEHから太陽光発電システムの条件を除いた家のことです。主に都市部の狭小地など、十分な創エネを実現できないところに適します。
条件をまとめると、以下の通りです。
・一次エネルギー消費量の削減効果が20%以上あること
・二階建て以上の住宅(補助金の申請条件)
補助金を申請する場合は、二階建て以上の家にする必要があります。
また、雪の多い地域でも、ZEH Orientedで補助金を申請することが可能です。
ZEHのメリット
ZEHの家を建てることで受けられるメリットを紹介します。
快適な住空間で過ごせる
ZEHは断熱効果の高い建材や建築技術が採用されていますから、一年を通して快適な住空間を実現できます。エアコンを使わなくても「夏涼しく、冬暖かい」家を実現できるでしょう。
また、部屋ごとの温度差も小さくなるため、急激な温度変化によって引き起こされる「ヒートショック」のリスクも軽減され、健康にも良い影響を与えてくれます。
光熱費を削減できる
省エネ性能の高い設備を採用するため、電気代やガス代といった光熱費を抑えられることもZEHの魅力です。高い断熱性によりエアコンを使う日も少なくなりますから、家計の負担も軽くなるでしょう。
また、太陽光発電システムを導入した家であれば、発電した電気を売ることで売電収入も得られます。
停電を防げる
太陽光発電システムと一緒に蓄電池も設置する場合、発電した電気を溜めることが可能です。災害などで地域一帯が停電になっても、蓄電池の電力を使うことで停電になるのを防げます。
資産価値を保ちやすい
家の資産価値を保つという点でも、ZEHが有利です。何らかの理由で家を売却することになった時でも、一般的な住宅と比べてZEHは高く売れる傾向があります。
ZEHのデメリット
ZEHにはメリットだけでなく、デメリットもあります。以下の内容を理解した上で、ZEHの家を検討することも大切です。
建築費が高くなる
高機能な省エネ設備や太陽光発電システムなど、性能の高い設備を導入するため、一般的な住宅よりも建築費が高くなりやすいです。
もっとも、補助金制度を活用することにより建築費を抑えることが可能ですし、光熱費をはじめ住み始めてから削減できるランニングコストも含めると、住居費は安くなる傾向があります。
メンテナンスの負担が重くなる
さまざまな設備を導入するため、メンテナンス費用が高くなりやすいこともZEHのデメリットです。ただ、光熱費などを削減した費用でメンテナンス費の一部をまかなえば、ランニングコストを抑えることも可能です。
太陽光発電システムの発電量が不安定
太陽光発電は天候の影響を受けやすく、曇りや雨の日が続くと十分に発電しないこともあります。また、日が短い冬場も発電量は減少します。発電量が不安定なため、時期によっては光熱費が高くなるかもしれません。
なお、余った電気を電力会社に売る時の単価が、近年、下落傾向にあります。
期待したほどの収益が得られない点も、デメリットといえるかもしれません。
ZEHを建てるときに使える補助金制度
ZEHの家は、最新の設備や技術を採用するため、建築費が高くなる傾向があります。そのため国は、一定の条件を満たすZEHの家を建てる人に対して、建築費の一部を支援する補助金制度を用意しています。
国の補助金制度には、・「ZEH支援事業」・「次世代ZEH+実証事業」・「次世代HEMS+実証事業」という3種類があります。
それぞれの内容を見ていきましょう。
ZEH支援事業
ZEHの基準を満たす家や、ZEH+の家を建てる時に使える補助金制度です。
補助額は、ZEHとZEH+とで異なり、ZEH(Nearly ZEHとZEH Orientedを含む)は定額55万円、ZEH+(Nearly ZEH+を含む)は定額100万円です(金額は2023年度分)。
蓄電システムやCLT(直行集成板)などの指定された住宅設備を採用すると、追加補助が受けられます。
次世代ZEH+実証事業
次世代ZEH+実証事業は、ZEHの要件を満たした上で、蓄電システムやV2H充電設備などの設備を導入した家に適用される補助金制度です。以下の設備のうち、一つを導入することが求められます。
・太陽光発電システム(10kW以上)
・蓄電システム
・V2H充電設備(充放電設備)
・燃料電池 ・太陽熱利用温水システム
補助対象になるのは、ZEH+(Nearly ZEH+を含む)の家を建てる方です。
補助額は、定額100万円(2023年度分)。
なお、上記の設備を2つ以上採用すると、追加補助が受けられます。
次世代HEMS+実証事業
次世代HEMS+実証事業は、ZEH+の要件を満たした上で、蓄電システムまたはV2H充電設備を導入し、さらにAI・IoT技術を使った高度エネルギーマネジメントを導入した家に適用される補助金制度です。
補助額は一律112万円です(2023年度分)。
この事業も、蓄電システムや燃料電池などの設備を追加で採用すれば、補助額も追加されます。
ZEH補助金申請に関する注意点
ZEHを建てるときに使える補助金は、関係各所に申請する必要があります。その申請に関して注意点がありますので、以下の点は覚えておきましょう。
申請はZEHビルダー(施工会社)が行う
補助金の申請は、「ZEHビルダー」または「ZEHプランナー」に登録している施工会社が行います。これは、ZEHを建てられる施工会社が決まっているからです。
つまり、「ZEHビルダー」または「ZEHプランナー」の施工会社に家づくりを依頼することも、補助金を得るための条件になります。
申請期間は決まっている
それぞれの補助金制度には、申請できる公募期間が決まっています。その期間内でなければ、申請は受け付けません。
このため、申請期間をあらかじめ確認した上で家づくりのスケジュールを決めることもポイントです。
なお、補助金には予算が設定されており、交付の決定は先着順です。
申請期間であっても、予算上限に達した段階で受付が終了になりますので、早目に動くことも大切です。
申請後の変更はできない
ZEHの家の設計プランは、エネルギー消費量や断熱効果など細かく計算しながら進めていきます。そして、プランが確定した段階で申請を行います。
申請後に間取りや設備などの変更をすると、計算をし直さなければならず、再申請しなければなりません。
申請期間は決まっていますから、場合にはよっては補助金が使えないこともあるでしょう。
基本的には申請後の変更はできないと考え、設計段階でしっかり検討した上で決めることも大切です。
ZEHの家は、健康的で快適な暮らしを実現したり、光熱費を削減できたりと、さまざまなメリットがあります。 建築費は高くなりますが、補助金制度もありますし、住み始めてからのランニングコストを抑えられますから、長い目で見るとお得になるケースがほとんどです。
なお、補助金制度は年度によって申請期間や補助額などの内容が変わります。
検討されている方は最新情報を確認した上で、家づくりの計画を立てましょう。