「住宅ローン」と一口に言っても、金利や借入先、契約方法などの異なる、さまざまな商品が提供されています。
この中から、自分の資金計画やライフプランにマッチする商品を見つけるのは、意外と大変な作業です。
ここで、住宅ローンの種類を「金利タイプ」「借入先」「契約方法」の観点から分類し、それぞれの特徴について解説します。
商品選びの参考までに、ぜひご一読ください。
住宅ローンの金利タイプは3種類ある
住宅ローンを金利タイプで
金利タイプは、トータルの返済額にも大きな影響を与えますから、それぞれの特徴を理解した上でご自身に適した商品を選ぶことが大切です。
変動金利型の特徴
変動金利型とは、市場の金利変動に合わせて住宅ローンの金利も変わる商品のことです。
ただ、リアルタイムで変動するのではなく、5年ごとに返済額を見直す商品が一般的です。
その際、返済額の引き上げは1.25倍までにするというルールがあります。
仮に、毎月の返済額10万円の場合、市場金利がどれだけ上昇しても、見直し後の返済額は12万5,000円までになります。
変動金利型の住宅ローンを選ぶメリットは、「3つのタイプでもっとも金利が低い」という点です。
現在のように低金利が長く続けば、トータルの返済額はもっとも安くなります。
しかし、金利が上昇すれば返済額は大きく増えるリスクもあります。
こうした特徴から、「借入額の少ない人」や「収入が増える見込みの人」といった方々に向いた商品といえるでしょう。
ちなみに、変動金利型は3つの金利タイプのなかで利用者が一番多く、全体の73.9%の人が選んでいます(※)。
その背景には、低金利が長く続いていることがあるようです。
※住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2022年4月調査)」
https://www.jhf.go.jp/files/400361299.pdf
全期間固定型の特徴
全期間固定型とは、完済まで金利が一定で変わらない商品のことです。金利が変わらないので、金融機関と契約するときにトータルの返済額も毎月の返済額も決まります。
このため、「将来の返済計画を立てやすい」ことが、全期間固定型を選ぶメリットの一つです。
また、「金利上昇リスクを避けられる」ことも魅力でしょう。
一方のデメリットは、「3つのタイプで最も金利が高い」という点が挙げられます。
現在のような低金利の状態が完済まで続けば、トータルの返済額は最も高くなります。
こうした特徴から、「返済計画を変えたくない」「金利上昇リスクを避けたい」という方には、全期間固定型の住宅ローンが向いているでしょう。
なお、全期間固定型は3つの金利タイプのなかで利用者が一番少なく、全体の8.9%しかいません(※)。
やはり、金利の高さをネックに感じる方が多いようです。
※住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2022年4月調査)」
https://www.jhf.go.jp/files/400361299.pdf
固定期間選択型の特徴
固定期間選択型とは、契約時は固定金利型で始まり、一定期間を過ぎたら固定金利型と変動金利型のいずれかを選べる商品のことです。
最初の固定期間は利用者が決められ、短い商品だと1~2年、長いものだと10~20年のなかから選べます。
このように、「金利を選択できる」ことが固定期間選択型の住宅ローンを選ぶメリット。
「金利動向を見ながら選びたい」という方には、適した商品でしょう。
ただし、選択を誤れば返済額が大きく増える可能性があります。
しかも、変動金利型のように返済額の引き上げは1.25倍までにするというルールは適用されません。
そのため、「市場金利が大幅に上昇すると、返済額も大きく増える」というリスクがある点は、あらかじめ認識しておく必要があります。
ちなみに、固定期間選択型で住宅ローンを利用している方は、住宅ローン利用者全体の17.3%です(※)。
※住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2022年4月調査)」
https://www.jhf.go.jp/files/400361299.pdf
住宅ローンの借入先について
住宅ローンを提供しているのは、銀行やノンバンクなどの民間金融機関だけでなく、公的機関からも借り入れができますし、「協調融資」といわれる複数の金融機関が提携した商品もあります。
それぞれには特徴がありますので、ご自身に適した借入先を選ぶことも大切なポイントです。
ここで、代表的な借入先として「民間金融機関」「財形住宅融資」「フラット35」について紹介します。
民間金融機関の特徴
民間金融機関には、銀行や信用金庫のほか、保険会社、ローン専門会社(ノンバンク)など、多くの借入先があります。
商品数も豊富で、一つの金融機関で複数のラインナップを用意しているところも。
金利や手数料も商品によって異なり、利用者の求める条件に合わせて商品を選びやすい点が民間金融機関の特徴です。
民間金融機関の住宅ローンを選ぶポイントの一つが、「金利」です。
ネットバンクは全体的に金利が低い傾向にありますが、市中の銀行でも、一定の条件を満たすと金利が優遇されるといった措置を設けているところもありますので、いろいろ比べてみましょう。
また、「使いやすさ」もポイントの一つです。
最近は、オンラインで申し込みや繰り上げ返済ができるといった、手続きが便利な金融機関も増えています。
そのほか、審査のスピードが早かったり融資実行のタイミングを相談できたりと、柔軟な対応力も使いやすさを見極めるポイントです。
特に、地方銀行や信用金庫は相談に応じやすいと
さまざまなサービスを展開する民間金融機関ですが、その際の「手数料」も確認しておきたいところです。
手数料は、オンラインでは無料でも窓口だと有料になる金融機関もありますので、検討しているサービスがある方はあらかじめ確認しておきましょう。
財形住宅融資の特徴
財形住宅融資とは、独立行政法人の住宅金融支援機構と民間の財形住宅金融が提供する住宅ローンです。
主に、福利厚生などに財形住宅融資制度がある企業に勤めている方が利用できます。
融資の条件は、財形貯蓄を1年以上続けており、残高が50万円以上あること。
融資額は、貯蓄残高の10倍以内で、上限は4,000万円です。
貯蓄残高の少ない方だと、希望額を借りられない点には注意が必要です。
財形住宅融資を利用するメリットの一つが、金利が低いこと。
固定金利型のため、変動金利型の住宅ローンと比べると高いですが、フラット35などの固定金利型の商品と比べれば0.5%くらい低い金利で借り入れできます。
なお、金利は5年ごとに見直されますから、返済額が増える可能性はあります。
このほか、融資手数料や保証料などの諸費用は不要な点も、メリットといえるでしょう。
フラット35の特徴
フラット35とは、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携した協調融資の住宅ローンで、多くの銀行が提供しています。
全期間固定金利型の商品ですから金利上昇リスクがなく、返済額は完済まで変わらないことが、フラット35を利用するメリットの一つです。
また、審査が比較的に厳しくないことも、フラット35の魅力です。
基本的には、返済負担率と建物の機能における条件を満たせば、借り入れできます。
勤続年数や雇用形態などは問わないため、転職して間もない方や自営業の方でも審査に通りやすいといわれます。
このほか、保証料や繰り上げ返済の手数料が無料であることも、利用しやすいポイントでしょう。
なお、フラット35の金利と事務手数料は各行で若干異なります。
少しでもコストを抑えたい方は、各行の金利と手数料を比較した上で、申し込みましょう。
複数人で契約できる住宅ローンもある
住宅ローンの契約者は通常一人ですが、夫婦や親子など二人で契約できる方法や商品もあります。
「収入合算タイプの住宅ローン(連帯債務型や連帯保証型)」や「ペアローン」などが、その一例です。
これらの住宅ローンを利用すれば借入可能額を増やせますから、物件の選択肢が広がったり、一つでも多くのこだわりを実現したりと、理想に近いマイホームを手に入れられる点が大きなメリットです。
ただ、利用に関しては注意点もありますから、契約方法や商品の特徴を把握した上で選ぶことが大切です。
収入合算タイプの住宅ローン(連帯債務型や連帯保証型)の特徴
収入合算タイプの住宅ローンは、「連帯債務型」と「連帯保証型」の大きく二つの契約方法に分かれます。
連帯債務型とは、夫婦のどちらかが契約者、もう一方が連帯債務者となり契約する方法です。
いずれも債務者のため、返済義務は同等に生じます。
また、住宅ローン控除は二人とも適用されますから、節税効果も期待できます。
一方の連帯保証型とは、夫婦のどちらかが契約者、もう一方が連帯保証人となり契約する方法です。
連帯保証人は債務者ではありませんが、契約者が返済できなくなった場合には返済義務が生じます。
なお、連帯保証人には住宅ローン控除は適用されません。
いずれの契約方法も、取り扱っている金融機関が少ないため、利用が限られる点には注意が必要です。
ペアローン
ペアローンとは、夫婦二人がそれぞれ別の住宅ローンを契約して、一つの物件を購入できる住宅ローン商品です。
二人ともに契約者ですから、住宅ローン控除がそれぞれに適用されます。
収入合算タイプの住宅ローンとの違いは、契約が2本になること。
このため、契約時の諸費用が2倍になります。
また、ペアローンは団体信用生命保険に二人とも加入できますが、収入合算タイプの場合、連帯保証人は加入できません。
連帯債務者は商品によって加入できますが、その商品は非常に少ないです。
諸費用は高くなるものの、万一のことを考えてペアローンを選ぶのも一手でしょう。
まとめ
「種類が多すぎて、どの住宅ローンを選べばよいか
ただ、選択肢が多いほど「自分にとって本当に適した住宅ローンを選べる」というチャンスも広がります。
上手に活用すればトータルの返済額を抑えられ、ゆとりある暮らしを実現しやすくなるのです。
この記事では、金利・借入先・契約方法の違いから分類しましたが、この3つの視点だけでも、ご自身に適した住宅ローンを絞り込めるでしょう。
資金計画やライフプランとも照らし合わせながら、自分にぴったりな住宅ローン商品を見つけましょう。