マイホームの選択肢として、「戸建住宅か、マンションか」で迷われている方は多いと思います。
どちらにも、メリットもあればデメリットもありますから、ご自身のライフスタイルや資金計画などに適した方を選ぶことが大切です。
では、戸建住宅とマンションには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ここで、それぞれの特徴や新居に住み始めてから必要な維持費(住居費)の点から、戸建住宅とマンションを比べてみましょう。
戸建住宅のメリット
プライバシーを守りやすい
戸建住宅は建物自体が独立していますから、プライバシーに配慮した生活をしやすい点がメリットの一つです。
マンションにように、隣戸の生活音や視線などを気にせず暮らすことも可能です。
また、2階建て以上の戸建住宅であれば、フロアをわけることで家族間でも程よい距離感を保てますから、マンションと比べればプライバシーを守りやすいでしょう。
制約が少ない
マンションの中には、管理規約によって飼えるペットの大きさや楽器の演奏などが制限されている物件もあります。
戸建住宅の場合も、近所迷惑にならないよう配慮は必要ですが、マンションほどの制限を受けることはなく自由に暮らせます。
もちろん、建て替えやリフォームをする場合も、規約に縛られず自由に行える点も戸建住宅のメリットです。
ランニングコストがかかりにくい
新居に住み始めてからのランニングコストで比べると、マンションより安く抑えられる点も、戸建住宅を選ぶメリットです。
マンションの場合、管理費や修繕積立金、駐車場代といった経費が毎月必要です。
こうした経費もなく、リフォーム費用を含めたトータルの住居費で見た場合でも、マンションより安くなることが多いです。
戸建住宅のデメリット
自分ですべて管理しなければならない
マンションであれば、共有部の清掃や修繕といった作業は管理会社が対応してくれます。
これに対して戸建住宅の場合、家のなかはもちろん、外構や敷地周辺の清掃や修繕など、すべて自分で行わなければなりません。
計画的にメンテナンスをしなければ、リフォームの際にかかる費用が高くなってしまうので、注意が必要です。
防犯上の不安
オートロックや防犯カメラといったセキュリティ設備の面においても、戸建住宅には不安が残るでしょう。
もちろん、戸建住宅用の防犯アイテムを充実させるなど、対策を強化することは可能です。ただ、その分は建築コストに跳ね返ります。
高齢になるとデッドスペースが増える
戸建住宅なら、2階以上のフロアを設けるなど、居住空間を広げやすいこともメリットの一つですが、逆に広げたことがデメリットになる場合があります。
たとえば、掃除や洗濯といった家事負担が重くなることもありますし、足腰の弱い方には階段の上り下りに苦労することもあるでしょう。
とりわけ高齢世帯では、2階が物置スペースとして有効活用されない住まいも散見されます。
マンションのメリット
立地のよい物件が多い
マンションは駅や商業施設に近い物件が多く、利便性を求める方にとって住みやすい環境です。
高層階に住めば、日当たりや風通しも良いですし、戸建住宅からは望めない見晴らしの良い物件も多くあります。
ただし、窓の位置によっては環境に恵まれない物件も存在します。
管理面でラク
エントランスや廊下といった共用部の清掃は、管理会社が対応してくれます。
また、修繕が必要になったときも管理組合が主導で行うため、個々の居住者の負担が軽いです。
セキュリティ面でも、オートロックや監視カメラ、常駐の管理人など対策が手厚く、空き巣に狙われるリスクが低い点もマンションのメリットといえます。
室内がフラットなので移動がラク
一般的なマンションには室内に階段がありませんから、居住空間での移動がしやすい点もマンションのメリットです。
家事動線や生活導線がシンプルな物件を選ぶことで、負担を軽減しやすいですし、高齢者世帯でも暮らしやすいでしょう。
マンションのデメリット
近隣トラブルが生じやすい
同じ建物で共同生活をするマンションだと、近隣トラブルが生じやすいことがデメリットの一つです。
特に上階の足音や生活音など音に関するトラブルが多く見られます。
そのほかにも、匂いやゴミ出しのルール、共有部の使い方などで近隣トラブルに発展するケースもあり、注意が必要です。
制約が多い
どのマンションにも、必ず管理規約が定められています。その規約は物件によって異なりますが、ペットが飼えなかったり、飼えても大きさが細かく定義されていたり、リフォームやリノベーションも自由にできなかったりするところもあります。
ランニングコストが高くなりやすい
マンションには、毎月かかる費用として管理費や修繕積立金があります。
車を所有されている方なら、駐車場代も必要です。
共有部の清掃や修繕など、資産価値を保つために必要な経費ではありますが、住み始めてからのランニングコストは戸建住宅よりも高くなりがちです。
戸建住宅とマンションの維持費を比較
戸建住宅とマンションをコストで比べた場合、「購入のしやすさ」という点では、マンションの方が手を出しやすいでしょう。
ただ、住み始めてからの維持費でみると、マンションの方が高くなることが多いです。
では、戸建住宅とマンションの住居維持費はそれぞれどれくらい必要なのでしょうか。必要な項目と目安の額をシミュレーションしてみましょう。
戸建住宅にかかる維持費の項目と目安
戸建住宅にかかる主な住居維持費は、次の3点です。
・税金(固定資産税・都市計画税など)
・保険料(火災保険・地震保険)
・修繕費(リフォーム費)
固定資産税や都市計画税といった税金は、建物の評価額(固定資産税評価額)によって決まります。
一般的に、戸建住宅は木造が主流ですから、鉄筋コンクリート造のマンションと比べると耐用年数が短く、資産価値(評価額)が下がりやすい傾向があります。
このため、長期的に見れば、戸建住宅の方が固定資産税などの税金が安くなりやすいのです。
一方、火災保険や地震保険などの保険料は、木造住宅よりも耐火仕様のマンションの方が安くなる傾向があります。
ちなみに、一般的な木造住宅の場合、火災保険料は1万円前後が目安。
地震保険を含めると年間で2~3万円くらいで、マンションよりも高くなる傾向があります。
戸建住宅に住み始めてからもっともコストがかかるのが、リフォームなどの修繕費です。
住まいの規模や設備などによって異なりますが、一例を挙げると、外壁塗装は1回あたり約100万円、屋根塗装なら約50万円、シロアリ防除が約20万円などの費用が10~20年おきに必要です。
内装工事も含めてまとめてリフォームする場合、一度に500~1,000万円くらいになるケースもあります。
マンションにかかる維持費の項目と目安
マンションにかかる主な住居維持費は、次の通りです。
・税金(固定資産税・都市計画税など)
・保険料(火災保険・地震保険)
・修繕費(リフォーム費)
・管理費
・修繕積立金
・駐車場代
戸建住宅でも説明した通り、マンションは資産価値が下がりにくいため、長期的に見ると税金が高くなる傾向があります。
ただ、火災保険料は、耐火仕様であることや区分所有でかけることになりますから、マンションの方が安いです。
もちろん、物件の構造や広さ、契約プランによって異なります。
マンションに住み始めてからもっともコストがかかるのが、「管理費」「修繕積立金」「駐車場代」といった戸建住宅にはない経費です。
仮に、管理費が月1万円の場合、年間で12万円、30年住み続けると360万円にもなります。
それよりも高いのが、修繕積立金です。一般的に、修繕積立金は築年数が古くなるほど高くなる傾向があります。
新築時には月額1~2万円でも、築年数が20~30年以上になると2~3万円にアップする物件も多いのです。
しかも、修繕積立金は共有部に使われるものですから、キッチンやユニットバスの交換など専有部のリフォームは、別途用意しなければなりません。
フルリフォームをする場合には500万円以上かかるケースもあり、戸建住宅よりも安いとはいえ多額の資金が必要です。
それぞれの維持費を比較
ここで、戸建住宅とマンションのそれぞれに30年間住み続けた場合の住居費を、シミュレーションしてみましょう。
なお前提条件として、物件価格はそれぞれ3,000万円の物件を購入。
リフォームは、戸建住宅では大きな工事を1回(工事費用は700万円と仮定)、マンション(専有部)ではおこなわないものとします。
この条件で、住まいの維持費を求めた結果は、以下の通りです。
|
戸建住宅 |
マンション |
税金 |
約240万円 |
約360万円 |
火災・地震保険料 |
約40万円 |
約10万円 |
リフォーム費 |
約700万円 |
0円 |
管理費・修繕積立金 |
0円 |
約940万円 |
駐車場代 |
0円 |
約360万 |
合計 |
約980万円 |
約1,670万円 |
30年間のトータルで見ると、戸建住宅は約980万円、マンションは1,670万円と、マンションの方が1.7倍も高くなることがわかります。
とりわけ、管理費や修繕積立金、駐車場代といった戸建住宅にはない経費だけで約1,300万円にもなり、戸建住宅よりも維持費が高くなる一因になっているのです。
まとめ
この記事では、戸建住宅とマンションの住居維持費に着目して比較しましたが、比べる要素は他にもありますし、その判断基準も人それぞれ異なります。
なにより大切なのは、「自分や家族の希望やライフスタイルに適した住まいを選ぶこと」です。
上記で紹介したメリットを享受しやすいのはどちらか、あるいはデメリットが許容できる内容かといった点も含め、総合的に判断することが大切でしょう。
多角的な視点をもって、どちらが暮らしやすい家なのかを家族みんなで話し合ってはいかがでしょうか。