住宅ローンは、「マイホームを購入したいけど自己資金が少ない」という方をサポートしてくれる、強い味方です。
ただ、融資額には年収や返済期間などに応じて「借入可能額」が決まっており、いくらでも借りられるわけではありません。
「いまの年収で、住宅ローンをどれくらい借り入れできるのか」と気になっている方へ。
ここで、借入可能額の求め方や無理のない返済プランを立てるためのヒントをお伝えします。
住宅ローンの借入可能額を決める要素とは
住宅ローンの借入可能額を決める要素には、「年収」「返済負担率」「返済期間」「金利」などがあります。
年収
年収は、給与所得者なら前年の収入、自営業者など収入が不安定な方は過去3年前後の収入をもとにする金融機関が多いです。
金融機関の審査では「収入の安定性」を重視しますから、年収が多くても審査に通らない方もいますし、逆に年収が少なくても審査に通る方はたくさんいらっしゃいます。
返済負担率
返済負担率とは、年収に対する年間の返済額の割合を示す数値のこと。
年収400万円の方が年間100万円を返済する場合、返済負担率は25%(=100万円÷400万円)です。
返済負担率の上限は金融機関によっても異なりますが、無理のない返済計画を立てるには25%以内が良いといわれます。
返済期間
返済期間を長く設定すれば、借入可能額を増やすことも可能です。
ただし、完済時期が定年後になる方は注意が必要です。
先述の通り、金融機関の審査では「収入の安定性」が重視されますから、定年後も返済が続く方は「収入が不安定になり返済が滞るリスクがある」とみなされ、審査に通らない可能性があるのです。
返済期間は定年までに完済できるように設定しましょう。
金利
返済期間が長くなれば、金利負担額が大きくなるという点は認識しておきたいところです。
仮に、3,000万円の住宅ローンを35年借り入れた場合、利息支払額は金利1%で約557万円、2%だと約1,174万円にもなります。
借入額と返済額が違うことを把握した上で、借入希望額を決めることも大切です。
年収ごとの住宅ローン借入可能額の目安を試算

これらの要素をもとに、金融機関では申込者一人ひとりの借入可能額を試算しており、住宅ローンの審査に活用されます。
つまり、借入可能額よりも申込者の希望額が少なければ審査に通りやすく、逆に希望額のほうが多いと審査に通りにくいことになるのです。
住宅ローンの審査に通るには、借入可能額をあらかじめ把握しておくこともポイントといえます。
ここで、借入可能額を年収別でシミュレーションしました。
返済計画を立てるポイントも併せて紹介しますので、参考までにご一読ください。
なお、シミュレーションの条件は以下の通りです。
・返済負担率:25%
・返済期間:35年
・金利:1.5%(全期間固定)
・返済方法:元利均等返済
参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
https://loan.mamoris.jp/index.html
※下記でシミュレーションした借入可能額は、あくまでも目安であり、金融機関の条件などによって異なります。
年収300~400万円台の借入可能額を決めるポイント
・年収300万円の借入可能額:2,041万円
・年収400万円の借入可能額:2,721万円
年収300万円に満たなくても借り入れできる住宅ローンはありますが、メガバンクなど一部の金融機関では年収300万円以上を条件としている銀行もあるようです。
年収300~400万円台で収入が安定している方であれば、2,000万円以上の住宅ローンを借り入れることも可能です。
ただ、地域によっては物件の選択肢が限られるため、もう少し借入したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
ここで考えたいのが、毎月の返済額です。
たとえば、年収300万円の方が2,041万円を借り入れたとき、毎月の返済額は6万2,492円になります。
一方、年収300万円がボーナス込みの場合、毎月の手取り給料は18万円前後くらいの方が多いでしょう。
給与からローン返済額を差し引くと、手元に残る額は約12万円です。
現在の支出状況から、この額でも生活や貯蓄ができるのであれば問題ありませんが、ゆとりがない場合は、返済負担率を20%に下げて検討するのも一手でしょう。
借入可能額は減ってしまいますが、返済を滞りなく続けられることを考えると、余裕をもたせた計画をすることも大切です。
年収400万円の場合も同様に、2,721万円を借り入れると毎月の返済額が8万3,312円です。
残りの額で、生活費や貯蓄を賄えるかがポイントといえます。
マイホームの購入資金をもっと増やしたい方は、ローンの借入額を増やすのではなく、自己資金を増やす方法も検討してみましょう。
年収500~600万円台の借入可能額を決めるポイント
・年収500万円の借入可能額:3,402万円
・年収600万円の借入可能額:4,082万円
年収500~600万円台であれば、3,000万円~4,000万円の住宅ローンを借り入れできますから、物件の選択肢が広がるでしょう。
注文住宅であれば、少しこだわった仕様の家を建てられるかもしれません。
返済額に着目すると、3,402万円を借り入れたときの毎月の返済額は10万4,163円、4,082万円だと12万4,984円です。
ローン支払後の残額で、ゆとりある生活ができるのであれば問題ない額でしょう。
ただ、返済負担率を上げて借入可能額を増やすのは、慎重になりたいところです。
金融機関によっては返済負担率を30%以上に設定できるところもありますが、その場合、年収500万円だと借入可能額は4,000万円以上、毎月の返済額は12万円以上になります。
同じく、年収600万円なら借入可能額は約4,900万円に増やせるものの、毎月の返済額は約15万円です。
借入額を増やすと家計が圧迫される可能性のある方は、借入額を増やすより自己資金を増やす方向で検討した方が賢明です。
年収700万円以上の借入可能額を決めるポイント
・年収700万円の借入可能額:4,762万円
・年収800万円の借入可能額:5,443万円
年収700万円以上ある方は、5,000万円前後の住宅ローンを借り入れることも可能です。
5,000万円を借り入れたときの毎月の返済額は15万円以上になりますが、毎月の給与からみれば余裕のある生活を送れる額ではないでしょうか。
家計に余裕があれば、返済負担率を30%以上に設定して借入可能額を増やすこともできそうです。
返済負担率が30%の場合、年収700万円の借入可能額は約5,700万円(毎月の返済額は約17万円)、年収800万円なら約6,500万円(毎月の返済額は約20万円)になります。
もちろん、家計と相談しながら決めることが重要です。
借りられる金額と返せる金額は違う

住宅ローンを検討する際、「いくら借りられるか?」という視点で考えがちですが、「いくらまでなら返せるのか」という視点から借入可能額を検討することも大切です。
なぜなら、家計の状況は一人ひとり異なるからです。
たとえば、上記のシミュレーションでは年収500万円の借入可能額が約3,400万円、毎月の返済額は10万円を超えます。
生活費や子どもの教育費、貯蓄に当てる額などの必要経費を考えると、毎月10万円の返済が重く感じる方もいらっしゃるでしょう。
ローンを返済すると生活にゆとりがなくなる方は、たとえ年収500万円以上でも3,400万円を借り入れることは難しいといえます。
3,400万円を借り入れられるのは、毎月10万円以上のローン返済があっても、生活に支障をきたさず滞りなく続けられる人です。
この視点で考えると、毎月の返済額から借入可能額をシミュレーションすることも重要なポイントといえます。
なお、以下に毎月の返済額から試算した借入可能額を掲載します。
シミュレーションの前提条件は、返済期間35年、返済負担率25%、全期間固定金利1.5%、返済方法は元利均等返済です。
毎月の返済額 |
借入可能額 |
6万円 |
1,959万円 |
7万円 |
2,286万円 |
8万円 |
2,612万円 |
9万円 |
2,939万円 |
10万円 |
3,266万円 |
11万円 |
3,592万円 |
12万円 |
3,919万円 |
13万円 |
4,245万円 |
14万円 |
4,572万円 |
15万円 |
4,899万円 |
参考:住宅保証機構「借入可能額の試算(返済額より算出)」
https://loan.mamoris.jp/borrowing_repay.asp
限度額まで借り入れることで起こるリスク
上記シミュレーションでは、返済負担率を25%に設定して求めています。
ただ、多くの金融機関では返済負担率を30~35%まで設定できますから、できるだけ高く設定して限度額いっぱいまで借り入れようと考えている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、借入額を増やすと毎月の返済額も増えます。
返済額が増えれば、滞納するリスクも大きくなるでしょう。
では、住宅ローン返済の滞納が続くと、どのような事態になるのでしょうか。
まず、金融機関は悪質なローン滞納者の情報を信用情報機関へ報告します。
いわゆる「ブラックリスト」に登録されるわけです。
ブラックリストに登録されると、自動車ローンを始めとするほかのローンの融資が受けられなくなる可能性があります。
さらに滞納が続くと、金融機関は裁判所に対して「強制退去」を申し立てることができます。
抵当権を設定した家や土地の売却額でローンの返済に当てようと、「競売にかける」準備に入るのです。
こうなると、ようやく手に入れたマイホームを手放すだけでなく、どこからもお金を借り入れできず、自己破産しか選択肢がなくなってしまいます。
実際に、返済が滞ってマイホームを手放す住宅ローン利用者が、1~2%いるというデータもあります。
最悪の事態を避けるためにも、返済計画をしっかり立てた上で余裕のある借入可能額を決めることが重要なのです。
まとめ

住宅ローンの借入可能額をあらかじめ把握していれば、家づくりにかける予算を決めやすくなりますし、金融機関の審査にも通りやすくなります。
借入可能額は、ここで紹介した住宅保証機構のホームページのほか、金融機関のホームページでも試算できますから、一度シミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
なお、限度額いっぱいの借入額は返済が滞るリスクを高めますから、おすすめしません。
「借りたお金は返さなければならない」と肝に銘じて、無理のない返済プランが立てられる借入額を検討しましょう。