マイホームをはじめ不動産を取得された方は、毎年「固定資産税」を納める必要があります。
納税額は、建物の仕様や立地環境などの諸条件にもよりますが、新築戸建住宅だと年間10万円以上になるケースも多く、住宅ローンの返済と同様に資金計画に含めておきたい項目です。
今回は、固定資産税の基本的な情報を中心に、新築戸建住宅における固定資産税の計算方法や相場、軽減措置の内容、節税のポイントなどを解説します。
固定資産税とは
固定資産税とは、土地や建物などの不動産に課せられる、地方税の一種です。
毎年1月1日時点で不動産を所有している人に対して、課税されます。
納税額は「土地」と「建物」に分けて課税され、戸建住宅の場合はその合計額を年に一回納めます。
納税額は土地・建物それぞれの「固定資産税評価額」に一定の税率をかけて求めますが、この評価額は3年に一度見直されるため、納税額も年によって変わります。
一般的には、土地の評価額は大きく変わりませんが、建物は経年劣化などにより年々価値が下がっていきます。
このため、新築戸建住宅の固定資産税も下がっていくのが通例です。
ただし、近くに新駅が開業する再開発地域などでは土地の資産価値(路線価)が上がることもあるため、地域や建物の仕様などによっては固定資産税がアップする場合もあります。
固定資産税と一緒に「都市計画税」を納める地域がある
主に都市部では、固定資産税のほかにも「都市計画税」という税金が課せられる地域があります。
都市計画税とは、都市計画法に基づき市街地を形成している地域などにある不動産に対して課される税金です。
該当する地域に家を建てると、固定資産税と一緒に都市計画税も納める必要があります。
都市計画税も、固定資産税評価額に一定の税率(最大0.3%)をかけて求めます。
税率は自治体により異なるため、気になる方はお住いの自治体に確認しましょう。
新築戸建住宅の固定資産税の相場は?
戸建住宅の固定資産税は、年間10~15万円くらいといわれます。
ただし、納税額は建物の構造や広さ、築年数、立地環境などの要因によって異なるため、一概にいくらとはいえません。
たとえば土地の場合、都心部と農村部とを比べると、都心部の方が高くなります。
また建物も、木造よりも鉄骨造の方が高くなる傾向がありますし、高価な住宅設備を設置している家は評価額が高くなり、固定資産税もアップする場合があります。
つまり、地域によっても異なれば、同じ地域でも建物の構造や面積などによって異なるのです。
固定資産税の具体的な計算方法については、この後で詳しく解説しましょう。
固定資産税の計算方法
固定資産税の納税額は、土地と建物それぞれの「固定資産税評価額」に一定の「税率」をかけて求めます。
公式にすると、以下の通りです。
【固定資産税の納税額】=【固定資産税評価額】×【税率】
税率は自治体によって異なりますが、標準税率は1.4%です。
税率がわかれば、固定資産税評価額を調べることで納税額を算出できます。
ここで、固定資産税評価額の算出方法を、土地と建物それぞれについて説明しましょう。
土地の固定資産税評価額の求め方
土地の固定資産税評価額は、路線価に土地の広さをかけて求めます。
公式にすると、次の通りです。
【土地の固定資産税評価額】=【路線価(固定資産税路線価)】×【土地の広さ】
ここでいう路線価とは、自治体が定める「固定資産税路線価」を用います。
実際の土地の購入額や相続税路線価、公示価格、基準地価などと異なる点に注意しましょう。
固定資産税路線価は、1m2あたりの価格が公表されており、自治体の税務課などで確認できます。
仮に、1m2あたりの路線価が10万円、土地の面積が150m2の固定資産税評価額は、1,500万円です。
これに税率(1.4%)をかけた21万円が、土地の固定資産税になります。
なお、軽減措置が適用される土地の場合、この額よりもはるかに安くなります。
詳しくは、後ほどお伝えしましょう。
建物の固定資産税評価額の求め方
建物の固定資産税評価額の求め方は、やや複雑です。
一般的には、「再建築価格方式」という計算法を用いて評価額を求めます。
再建築価格方式とは、その家と同じ建物を建てるとき必要な費用をシミュレーションする方法です。
新築の場合は、自治体の担当者が構造や資材などを確認する家屋調査を実施し、建物の固定資産税評価額を決めます。
なお、家屋調査には家主の立ち合いが求められます。
事前に自治体から通知が来ますので、建築確認済証や見積書、工事請負契約書など必要書類を準備して、調査してもらいましょう。
このように建物の固定資産税評価額は、自治体が調査した上で決定するため、新築の家でも建築費用とは異なる額になります。
一般的には、建築費用の7割くらいが固定資産税評価額になるケースが多いようです。
仮に、建物の固定資産税評価額が1,500万円とすれば、これに税率(1.4%)をかけた21万円が、建物の固定資産税になります。
なお、建物にも一定の条件を満たす場合には軽減税率が適用されます。
固定資産税の軽減措置
固定資産税には「軽減措置」が設けられており、一定の条件を満たすと納税額が安く抑えられます。
その条件も、土地と建物で異なります。
それぞれの軽減措置について詳しくお伝えしましょう。
土地の軽減措置
土地の固定資産税には、住宅用地の特例による軽減措置があります。
適用条件は、「家を建てる(建っている)土地であること」です。
条件を満たす土地には、以下の特例が適用されます。
・200m2以下の土地は、固定資産税評価額が6分の1に減額
・200m2以上の土地は、200m2以下の部分は固定資産税評価額が6分の1に、200m2を超える部分は3分の1に減額
一例として、土地面積が150m2、固定資産税評価額が1,500万円の場合、評価額は6分の1の250万円に減額されます。この額に税率(1.4%)をかけた3万5,000円が、土地の固定資産税です。
軽減措置が適用されない場合は21万円ですから、かなり安くなります。
建物の軽減措置
建物は、新築のみに適用される軽減措置があります。適用条件は、次の通りです。
・新築住宅であること
・居住部分の床面積が50m2以上280m2以下
・居住部分の床面積は120m2まで
最後の条件は、床面積が120m2を超える家でも「120m2までの部分」には軽減措置が適用されますが、120m2を超える部分は適用されないということです。
これらの条件を満たす家は、取得から3年間(長期優良住宅は5年間)の固定資産税が、2分の1に減額されます。
一例として、床面積が150m2、固定資産税評価額が1,500万円の建物の固定資産税を求めます。
まず、軽減措置が適用されるのは120m2まで(床面積の8割)です。
適用部分の固定資産税評価額は、「1,500万円×80%=1,200万円」。
これに税率(1.4%)をかけ、さらに2分の1にすると、8万4,000円です。
続いて、軽減措置が適用されない30m2(床面積の2割)部分の評価額を求めると、「1,500万円×20%=300万円」。これに税率(1.4%)をかけて、4万2,000円です。
これらを足した12万6,000円が、建物の固定資産税になります。
軽減措置が適用されない場合は21万円ですから、こちらも大きく節税できます。
なお、建物の軽減措置は2024年3月31日までの時限措置です。
また、軽減措置を受けるには自治体に申告する必要があります(一部自治体では申告しなくても適用されます)。
申請期限など詳しくは、各自治体に確認しましょう。
固定資産税の納め方
固定資産税の納付は、毎年4月~6月頃に自治体から納税通知書が送られてきますので、税額を確認して納めましょう。
多くの自治体では、年4回の分割納付が認められています。
一度に払えない場合は、分割を活用しましょう。
納付方法は、金融機関の窓口振込や口座振替、コンビニ払いなどがあります。
一部の自治体では、クレジットカードや電子マネーでの納付もできるようです。
期限に遅れないよう、必ず納めましょう。
固定資産税を節税するポイント
建物の固定資産税は、家づくりを工夫することにより節税することも可能です。
具体的な方法をいくつか紹介します。
長期優良住宅を建てる
新築住宅には建物の固定資産税が3年間、2分の1になる軽減措置がありますが、長期優良住宅であれば5年間に延ばせます。
もっとも、長期優良住宅は評価額も高くなるため、長い目線で見ると固定資産税は高くなるかもしれませんが、ほかにも不動産取得税の減税や住宅ローン控除の優遇など、多くのメリットがありますから、検討する価値はあるでしょう。
ロフトや中庭を設ける
同じ床面積の家でも、ロフトや中庭は法定床面積に含まれず、固定資産税の課税対象面積の対象外です。
「居住空間を広げたいけど、固定資産税は抑えたい」という方は、ロフトや中庭を検討するのも一手でしょう。
なお、ベランダやバルコニーも、一定の条件を満たせば課税対象面積に含まれません。
ただし、その条件が厳しく、多くの場合は課税対象面積に含まれてしまい、固定資産税が発生しますのでご注意ください。
まとめ
新築の固定資産税は、土地の評価額は決まっていても、建物は完成しないと評価額が決まらないため、推測しにくいのが実情です。
ただ、おおまかな費用として「建築費の7割くらいが評価額」といわれます。
仮に、建築費が2,000万円の家なら評価額は1,400万円くらいになります。
それに税率(1.4%)をかけた20万円前後が建物の納税額になるでしょう(軽減税率適用前の場合)。
なお、固定資産税には軽減措置があります。
適用されると納税額は大幅に安くなるため、こうした制度も活用することもマイホームをお得に購入するポイントです。