住宅ローンの返済方法には、「元利均等返済」と「元金均等返済」という2種類があることをご存じでしょうか。
一般的には「元利」を選ぶ方が多いため、あまり気にせず契約している方も少なくないでしょう。
ただ、資金計画によっては「元金」を選んだ方が利用しやすい人もいますし、トータルの返済額も「元金」の方が安くなることが多いです。
そもそも、元利均等返済と元金均等返済は何が違うのでしょうか。
それぞれのメリットやデメリット、トータル返済額の違いなどをまとめてお伝えします。
元利均等返済とは
住宅ローンの元利均等返済とは、元金(借入額)と利息の合計額を毎月均等に返済する方法のことです。
毎月の返済額は、金利変動がない限り同じですから、返済計画を立てやすいという特徴があります。
具体的なケースとして、「借入額3,000万円を30年で返済する」ケースで見ていきましょう。
元利均等返済では、まず30年間の利息支払額を求めます。
仮に、利息が600万円ならトータルの返済額は3,600万円です。
これを、返済期間(30年=360ヵ月)で均等に割った10万円が、毎月の返済額になります。
元金均等返済とは
住宅ローンの元金均等返済とは、まず元金(借入額)を均等に割って、それに借入残高に応じた利息支払額を合計した額を毎月の返済額とする方法のことです。
利息支払額は、借入残高の多い返済初期は高くなりますが、完済に近づくほど安くなり、最後にはほぼ元金のみの返済になります。
これも、「借入額3,000万円を30年で返済する」ケースで見ていきましょう。
まず、元金を30年(360ヵ月)で均等に割ります。
この場合、毎月返済する元金は約8.3万円です。
次に、「借入残高に応じた利息支払額」を求めます。返済初期は借入残高が多いため、利息支払額は高くなります。
仮に金利が年1.5%の場合、最初の月の利息支払額は3万7,500円となり、元金と合わせた返済額は12万円を超えます。
ただ、借入残高は徐々に減っていきますから、返済開始から17年目以降は毎月の返済額が10万円を割り込み、最後の返済額は約8.3万円と、ほぼ元金のみになります。
このように、毎月の返済額が徐々に減っていくのが元金均等返済の特徴です。
元利均等返済のメリット・デメリット
毎月の返済額がほぼ変わらない、元利均等返済のメリットとデメリットを見ていきましょう。
元利均等返済のメリット
元利均等返済を選ぶメリットのひとつは、「返済計画を立てやすい」ことです。
金利変動による返済額の変更はありますが、元金均等返済ほど大きな変動はなく、将来の返済プランを立てやすいでしょう。
もう一つのメリットとして、「審査に通りやすい」ことも元利均等返済の特徴です。
金融機関の審査では、ローン実行直後の返済額に無理がないかという点も見ていますから、同じ借入額でも初回の返済額が安くなる元利均等返済の方が、審査に有利です。
元利均等返済のデメリット
一方で、元利均等返済のデメリットは「トータルの返済額が高くなること」です。
元金均等返済と比べて、元利均等返済は元金の減るスピードが遅くなります。
このため、利息支払額が増えやすく、トータルの返済額は元利均等返済の方が高くなるのです。
利息支払額を少しでも減らすには、繰り上げ返済を利用するのも一手。
繰り上げ返済は、元金の返済に充てられますから、利息も減らせてトータルの返済額を少なくできます。
元金均等返済のメリット・デメリット
毎月の返済額が徐々に減っていく、元金均等返済のメリットとデメリットを見ていきましょう。
元金均等返済のメリット
元金均等返済は、「トータルの返済額が安くなること」がメリットの一つです。
元利均等返済と比べて元金の減るスピードが早いため、元金均等返済だと利息支払額を抑えられます。
このため、トータルの返済額も安くなるのです。
また、毎月の返済額が徐々に減っていきますから「将来の家計にゆとりが生じやすい」こともメリットといえます。
現在はある程度の収入があっても老後の生活が心配な方は、元金均等返済を選ぶことで、将来の返済負担を抑えられるでしょう。
元金均等返済のデメリット
元金均等返済のデメリットは、「住宅ローン実行直後の返済額が高い」ことが挙げられます。
後ほど、毎月の返済額をシミュレーションしますが、初回の返済額は元利均等返済と比べて数万円も高くなります。
返済額は徐々に減っていくとはいえ、返済開始直後の家計を圧迫する可能性もあり、返済が滞るリスクも高いのです。
融資をする金融機関も、その点を不安視しますから、「審査に通らない可能性が高い」ことも元金均等返済のデメリットといえます。
元利均等返済と元金均等返済の返済額をシミュレーション
これまで説明した通り、元利均等返済はトータルの返済額が高くなる一方で、元金均等返済だと初回の返済額が高くなり金融機関の審査に通らない可能性もあります。
では、それぞれの返済額はどれくらい違うのでしょうか。ここで、元利均等返済と元金均等返済の返済額をシミュレーションしてみましょう。
借入額3,000万円を35年で返済するケース
まず、3,000万円を借り入れて35年で返済するケースで見ていきます。
なお、金利は全期間固定の1.5%で試算しました。また、毎月の返済額は元金均等返済だと変化しますから、「初回」「10年後(120回目)」「20年後(240回目)」「30年目(360回目)」「最後」の額も掲載しています。
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元利均等返済 |
元金均等返済 |
初回 |
9万1,855円 |
10万8,928円 |
10年後(120回目) |
9万1,855円 |
9万8,303円 |
20年後(240回目) |
9万1,855円 |
8万7,588円 |
30年後(360回目) |
9万1,855円 |
7万6,874円 |
最後の返済額 |
9万1,855円 |
7万1,757円 |
トータルの返済額 |
3,857万9,007円 |
3,789万3,605円 |
参考:keisan「ローン返済(毎月払い)」
https://keisan.casio.jp/exec/system/1256183644
初回の返済額で比べると、元金均等返済の方が1万7,073円も高くなります。
ただ、元金均等返済の返済額は徐々に減っていき、16年目以降は元利均等返済より安くなって、最後の返済では2万円以上もの差が出ます。
また、トータルの返済額をみると元金均等返済の方が70万円近くも安いことがわかります。
2,000万円を25年で返済するケース
続いて、借入額が少なく返済期間も短くした場合で、シミュレーションしてみましょう。
金利は先ほど同じく全期間固定の1.5%で試算します。
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元利均等返済 |
元金均等返済 |
初回 |
7万9,987円 |
9万1,666円 |
10年後(120回目) |
7万9,987円 |
8万1,749円 |
20年後(240回目) |
7万9,987円 |
7万1,749円 |
最後の返済額 |
7万9,987円 |
6万6,949円 |
トータルの返済額 |
2,399万6,020円 |
2,376万2,400円 |
参考:keisan「ローン返済(毎月払い)」
https://keisan.casio.jp/exec/system/1256183644
このケースでも、初回の返済額は元金均等返済が高いものの、完済に近づくにつれ元利均等返済より安くなります。
トータルの返済額は、元金均等返済の方が約23万円も安いです。
ただ、3,000万円を35年間借り入れた場合と比べると、元利均等返済との差は小さいことがわかります。
結局のところ、元利均等返済と元金均等返済の差は「利息支払額」の差です。
借入額が少ない場合や返済期間が短いとき、あるいは金利が低い時代は、トータルの返済額に大きな差は生じないのです。
どちらの返済方法が向いている?
元利均等返済にも元金均等返済にも、メリットがあればデメリットもありますから、どちらを選ぶと得策なのかは人それぞれ異なります。
返済方法を選ぶ際には、「自分にとって恩恵が大きく、リスクをカバーしやすいほうを選ぶ」ことがポイントといえるでしょう。
ここで、どのような方がどちらの返済方法を選ぶと良いかを、まとめてお伝えします。
元利均等返済に向いている人
・毎月の収入が安定している人
・今後の収入が増える見込みの人
・借入額をできるだけ増やしたい人
元利均等返済は毎月の返済額がほぼ同じですから、収入が安定している人に向いています。
これから収入が増える見込みの方なら、育児や教育費などの支出が増えても安泰でしょう。
また、限度額いっぱいまで借り入れたい人も、初回の返済額を抑えられる元利均等返済を選んだほうが有利です。
ただ、限度額ギリギリだと返済が滞る恐れがあります。
余裕のある返済計画を立て、家計に余裕が生まれたら繰り上げ返済を利用するなど、トータルの返済額を抑える工夫もしていきましょう。
元金均等返済に向いている人
・年収に対して借入額が少ない人
・トータルの返済額を抑えたい人
・定年後も返済が続く人
ローン実行直後の返済額が大きくなる元金均等返済は、年収の多い方や年収に対して借入額の少ない方に適しています。
自己資金を多めに用意できる方も、借入額の減額や返済期間の短縮により、トータルの返済額をより抑えられます。
40歳以上の方で定年後も返済が続く予定の人も、元金均等返済が向いています。
毎月の返済額は徐々に減っていきますから、定年後の返済負担が軽くなるでしょう。
定年前に完済できれば、老後の貯蓄を増やすことも期待できます。
まとめ
元利均等返済か元金均等返済で迷ったら、ライフプランを含めて総合的に判断することが大切です。
単にトータルの返済額が安いからとって元金均等返済を選ぶと、返済が始まってから家計が苦しくなり滞納のリスクが高まります。
また、定年後も返済が続く方が元利均等返済を選ぶと、セカンドライフにゆとりがなくなるかもしれません。
どちらの返済方法なら無理なく返済できるかを考え、それぞれのメリットとデメリットを比べながら、恩恵の大きい方を選ぶことが大切です。